撲殺脳筋僧侶様の仰せの通りに

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撲殺脳筋僧侶様の仰せの通りに

 「それじゃあ悪いけれど勇者様、ご(えん)がなかったということで。」  目の前で、(うるわ)しい魔法使いの少女が去っていく。  「…あ、はい。」 また、フラれたか。 呆れて溜め息すらでなかった。  俺は勇者である。 神に選ばれて、勇者として魔王を討伐するように大国から命じられた。 だがこの世界で勇者とは、たった一人だけの特別な存在なんかではない。  この世界では神、それも実際に姿を見たわけではないので凄く胡散臭い存在に選ばれた『勇者』が何百人といる。 つまり俺は何百人いる勇者の中の一人である。  元々俺はクソど田舎の村で生まれ育った、ただの『村人その一』でしかなかった。  しかしある日勇者として選ばれ、田舎の村を出て大都会である大国にやって来た。  やって来た当初は俺も期待と夢に溢れていた。 それも当然。 畑や家畜などを除いて何もない田舎から、突然都会の大国に来たのだ。  あらゆる全てのものが輝いて見えた。 多くの人で溢れた街並みに、たくさんの店が立ち並ぶ出店エリア。  武器屋を出入りするのはピカピカの鎧に身を包んだ大国の騎士、あるいは立派な杖を手にした高名な魔法使い。  自分もこんな風に輝くような勇者として名を()せて、いつかは英雄と呼ばれるのだろうか、と。 そう思った時もあった。 勇者として選ばれたからには、立派な仲間たちが自分の元に現れると信じていた。 もちろん、自分以外全員美少女、または美女だ。  たとえば男勝りで気の強い女騎士。  たとえばおしとやかで包容力がある女賢者。  たとえばお色気たっぷりな美女魔法使い。  だが俺は悲しいほどに平凡で弱かった。  そんな特徴のない、力もなければ名もなく冴えない勇者の元に、自ら好んでやって来る美少女、美女などいない。 どんなに話しかけても、どんなにスカウトをしても、まるで相手になどされなかった。  俺は魔王討伐のための仲間を集めることすら出来ず、勇者としてのスタートラインにすら立てていなかったのだ。  「はぁ…。」  今日も無意識に重い溜め息が出る。 これで一つ幸せが逃げていく。 こんな不幸そうな顔をした勇者に寄ってくる者などいないだろう。  俺が向かったのは勇者を支援してくれる冒険者ギルドだ。 そこで仲間を集めたり、魔物を退治するための依頼を受けられる。
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