はじめまして、さようなら。

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はじめまして、さようなら。

私は人魚を見た事がある。其れはまだ、私が幼い頃だった。  父と母と一緒に海に来ていた時母が「先に海の方へ行っておいで」父も「そうだな、行ってくるといい」と言うもんだから、心細いが一人で海に行った。 其処には、岩の影に一人の女性が座っているように見える。バレないように、そっと近づくと、魚の様な尾鰭に人の上半身がついた、正真正銘の人魚だった。顔を見てみたいなと思ったその時、女性が此方を振り向いた。 その顔は狂気そのものだった。尖った歯に、大きな口。とても、御伽噺の様な物とは大違いだったと思う。どうせ、嘘だったり、子供の頃の夢だろっと思っている方もいるだろうが、本当のことだ。 其れはさておいて、こんな話をしたのにも理由があります。もう一度、彼女をみたいからなのです。先程、話した海はもうとっくに立ち入り禁止となっていたので、貴方に許可を得たいなと思ったのです。 あぁ、有難う御座います。勿論、一人で行きますよ、流石に貴方を連れて行くわけにはいきませんので。明日には行こうと思います。ではさようなら。  今朝は、魚を食べたい気分でしたので、魚を外で焼いて食べてみたんですけど、匂いを嗅いで来たのか一匹の野良猫がやってきたんです。私の方を見てにゃーと鳴くもんだから、ひょいと、魚を投げてやると目を輝かせ美味しそうに魚を食べる様子がとても愛らしかったので、撫でてやると、私の人差し指をガブっと、これでもかと言うほど噛んできたので、血が出て痛さで悶え苦しんで死ぬかと思いました。こんな話をしながら、車を運転してたら、いつのまにか着いてたのだ、時間が過ぎるのは早いな、と実感させられるものだ。 これで、終わり。この話の終わり。 続きなんてない。話も終われば、人の人生も終わる。この人が、どうなったのか、どうなったのかなんて君達が考えることだ。この人が、来ている途中に死んでいた可能性だって、あるわけだ。 彼は彼女に会えたのか。彼が彼女を、見れたのか。君たち次第だ。
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