0人が本棚に入れています
本棚に追加
つまらない、学校生活
最新型AIのポケット。これは教育上の問題を解決した画期的なシステムだ。対面授業でありがちな、授業ペースが速すぎて置いて行かれるという教育上の問題。ポケットはこの問題を解決してくれる。バーチャル技術で現実世界に、ポケットに入る程度の小さな教師を投影する。そして、授業で分からなかったところを小さな教師が教えてくれるわけだ。つまり、技術の発展したことで勉強を影ながら教えてくれる、小さな教師を作りだしたと考えるが手っ取り早い。そして、これの効果は絶大で、多額のお金を使ってでも、学校にどんどん配置されていった…………。
春の温かさがまだ残る晴れた日。周囲の人はポケットの力を借りながら、カリカリとノートをとっている。対して、俺はというと…………。
「やばい、全く分からない…………」
高校教育が義務化したおかげで、辛うじて高校に入学することが出来た。それでも、成績が足りなくて、授業進度の遅いポケットの導入された学校に転校させてもらったところまではいい。だが、現実は非常に酷だった。
やっぱり学校ってつまらないな……。
脳内で溜まっている怒りを吐き出す。なんだよ!ポケットの導入された学校なら授業のレベルが下がっているはずだろ。そう思っていたのに、全然難しんだけど?なんだよ、サイン、コサインって!それにタンジェント?
サイン、小サインってきたら、次は大サインだろ!
難しい授業が駆け抜けるように進んでいく。その中で俺は何もできずに、その場で足踏みをしているというのに…………。
先生の授業を理解できないのは俺だけなのかと思い、周囲をグルっと見る。すると、大半の生徒が机の上でフィギュアサイズの水色の髪の女子と一緒にお話ししている。
「そうだ!ポケットを使えばいいんだ!前の学校は導入されてなかったから忘れてたけど、今は最新の技術があるんだ。」
どんな感じで教えてくれるんだろう?噂によると、授業を教えてもらうことには申し分なく。さらに日常会話も完璧にこなすことが出来るのだ。でも、友達になるのは難しいらしい。まあ、人工知能だから仕方がないか!
ポケットを起動させるため、俺は自分の胸ポケットを2回ポンポンと叩く。すると、ズボンの右ポケットからピンク髪の可愛らしいい女の子がひょこっと飛び出してくる。
「初めまして、私はポケットのアイで~~~す。」
「ああ、胸ポケットから出てくるんじゃないんだ!」
ズボンをよじ登り、机の上まで移動するアイ。友達になるのは難しいって聞いていたけど、思っていた以上に明るい性格をしているな。ていうか、動き1つとっても人間とあまり変わらないわ。最近の技術はすごいな!分からない問題あるし早速聞いてみよう。
「サインとコサインていうのが分からないんだけど、教えてくれない?」
「サリンとコカインですか!任せてください。私の得意分野です」
「そんなわけねぇだろ。サインとコサインだよ。そんな危ないもんを高校の授業で扱うわけねぇだろ!」
「なるほど、高校レベルになると、青酸カリの千倍程度の毒性を持つテトロドトキシン。1グラムで一千万人の命を奪えるボツリヌストキシンになりますね」
「なんでそんなに毒に詳しんだよ!もしかして、他のAIもそういうのに詳しいのか?」
「いいえ、これは私が勝手に勉強したことです。つまり……」
「つまり?」
「独学で毒学を学んだということです!」
どういうことだ?なんか、俺のポケットだけ壊れてないか?もしかして不良品なのか?
すると、ここでボディービルのような先生に少しばかりうるさいと、怒りの視線を向けられる。ヤバい、これ以上騒がしくしたら…………考えるだけでも恐ろしい。
すると、アイがニヤリといたずらな笑みを浮かべてこちらを見てくる。
「ふふふ、この学校の説教の仕方は怖いですよ…………」
俺は少しばかり顔をしかめる。
「いや、怒り方なんてどの学校も変わらないだろ。」
「いえ、とにかく理不尽に声のデカさで怒る先生も、人工知能が採取したデータを使って説教します。だから、相手の欠点を的確につきながら、怒りをぶつける説教をするというわけです!」
「説教されるとめんどくさい両方のタイプを兼ね備えてるとか立ち悪すぎるだろ。めんどくさい界のピッチャーとバッターが出来る、まさに二刀流のような教師ばかりというわけか…………」
アイの声が可愛い女の子声から機械的な声に変わる。
「すみません、よくわかりません。」
「ノッてくれてもいいだろ……。まあいいや、早くここの数値を教えて欲しんだけど?」
俺は机の上に開かれている教科書を指さす。すると、その丁度、線上にいたアイが答えてくれる。
「え?そんな…………初対面なのにぶっこんだ質問ですね?いいですよ最近太っりましたけど…………上から…………」
「アイさんのスリーサイズの数値を聞いてるんじゃないです」
「え?身長と体重は流石に乙女の秘密ですよ」
「なんで教育用AIなのに、そんな細かいところまで設定されてんだよ!」
あっ…………俺は思わず声を漏らす。
すると、そんなことをしていると、目の前にボディービルダーのようなムキムキの先生が立っていた。あっ、死んだ…………。
「おい、お前ぇぇ廊下に立ってろぉぉ!」
廊下に立たせるとか……怒り方は昭和なのかよ…………。
やっぱり学校ってつまらないわ…………。
最初のコメントを投稿しよう!