第二章《不穏な兆し》

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第二章《不穏な兆し》

 ここはギルドのマスター(ドルバドスさん)の部屋。  私はソファーに座り、黙ってみんなの会話を聞いていた。  テーブルの上には、無造作に置かれた二枚の依頼書がある。その中の一枚を手に取りグレイは、険しい表情でみていた。 「……人員要請か。依頼人は、コルザ・リチャム。……これは、どういう事だ? なんで……あの人が、」 「グレイ、そういえばお前……コルザのこと知ってたな」 「ああ、昔……あの人には世話になった。……恩がある人だ。だが、この依頼書は……」  グレイは頭を抱えながら、持っている依頼書をジッとみる。  私には二人の会話が良く分からない。だけど聞いていればそのうち分かると思い、そのまま二人の会話に耳を傾けた。  ムドルさんとメーメルはその話を真剣に聞いている。 「んー、話が良くみえないのですが」 「お前には……いや、ムドルそれにルイとメーメルにも詳しく話しておいた方がいいな」  そう言うとグレイは、詳しく説明し始めた。  ――場所は移り、ここはコルザの屋敷――  コルザの屋敷は酒場街より西の高台にある。その建物内の二階の書斎では、コルザが苦虫を噛み潰したような顔で窓の外を眺めていた。 「なぜ、こうも上手くいかない……」  悔しさのあまり持っていたペンをボキッと折る。 (立て続けに三人も攫い損ねた。このままでは、ティハイド様に怒られてしまう。もっと役に立つものを雇わねば、な)  そう考えながら机に向かい椅子に腰かけた。  このコルザ・リチャムは、町長のブレファス・リチャムの弟だ。位は、男爵である。  薄黄緑に銀色がチラホラ混ざった短い髪に両手を乗せると、ガクッと前かがみになり両肘をついた。 (まだ、攫った少女たちのことは知られていない。だが、三人も逃がした。足が付かなければよいが……。その前に使える人員が必要だ。そのために、依頼をしたのだからな)  だが、不安な表情は隠せない。本当にこれで良かったのかと思っていたからだ。  そうこう考えているとノックされ扉が開く。そこから紫の髪の男が部屋の中に入ってきた。  そしてコルザの前までくると軽く頭を下げる。 「コルザ様。まだ悩まれているのですか? 起きたことを悔やんでも仕方がありません。それよりも昨日、攫った少女を早くこの屋敷から別の場所に移しませんと」 「ああ、そうだな。トゼル……そっちは、お前に任せる」 「承知しました。では早速、行動に移したいと思います」  そう言いながらトゼルは、頭を下げるとニヤリと笑みを浮かべた。  その後トゼルは、部屋から出ていく。  それを確認したコルザは、再び頭を抱える。 (こんなことなら、このようなことに手を貸すのではなかった。だが、ティハイド様(あの方)には逆らえない。それに今更……どうにもならん……)  そう思いながら更に思い悩むのだった。
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