第二章《便利アイテム……魔法のペンと便箋》

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第二章《便利アイテム……魔法のペンと便箋》

 ここはタルキニアの町。そしてこの町の中央にある噴水がある広場だ。  私はあれからグレイと宿屋に戻る。それからグレイと少し話したあと一人でここに来ていた。  そうグレイは何か調べたいことがあるらしく、この町の北東側にある酒場街に行っている。  私も行ってみたかった。だけど、まだ早いと言われる。  現在、私は木の長椅子に座り大きな噴水を眺めながらムリゴを食べていた。 「ん~、やっぱ美味しい~」  今食べてるムリゴ以外にもあと五個バックにある。 「グレイ、まだかなぁ」  そう言いながらまたムリゴにかぶりつく。  だけど、まさかメーメルが魔族……。グレイの話だと、なんか訳があるみたいなこと言ってた。それに、そのことについてあとでメーメルも交えて話すって……。  そうこう考える。すると私の側に、いかにもガラの悪そうな三人の男が近寄ってきた。  目の前にいるのは、怖い顔の男性と、みえてるのかどうか分からないほど細い目の男性と、常にニヤケタ表情の小柄な男性である。 「お嬢ちゃん、一人か? 暇なら俺らと遊ばねえか」  怖い顔の男性が私に話しかけてきた。 「連れとここで待ち合わせしてるので」  私は、首を横に振ったあとそう答える。 「だが、まだ来てねえんだろう。なら、その間……」  その怖い顔の男性はそう言いながら私に触れようとした。とその時「グハッ!!」っと三人共に血を吐き倒れる。  そう誰かが三人に目掛け、強烈な膝蹴りを物凄い速さで右から左へと連続で繰り出したのだ。  能力のせいか私にはそれがみえていた。  私は何が起きたのかと確認する。一瞬、グレイが助けてくれたと思った。でも、よくみるとそこに居たのは長身の男性だ。私は、ガッカリする。 「大丈夫ですか?」  それをみたその長身の男性は心配そうに私をのぞき込む。  う、イケメンだ。黒に毛先が青紫のグラデーションの髪色。それをキッチリと後ろで縛っている。どこかの貴族の御曹司なのかな。そう思うほど高貴な雰囲気がした。  そう思いながら頷く。 「あ、大丈夫です! ありがとうございました」  私は、ペコっと頭を下げる。 「それは良かった。落ち込んでいるようでしたので」 「はい、知り合いが助けてくれたのかと思っただけです」 「なるほど、もしかしてそれは恋人ですか?」  そう言われ私は首を横に振る。 「いいえ、男性だけど、()()()()()()()!」 「そうなのですね。様子をみて、そうなのかと思ってしまいました。それで、その師匠をここで待っているという訳ですか」 「そうなんですけど……まだ、こないんですよねぇ」  そう思いながらグレイの顔を思い浮かべた。急に顔が熱くなる。 「……クスッ、顔が赤いですよ」 「あっ、これは!?」  慌てて取り繕うとした。 「まあ、そのことはいいでしょう。それはそうと……。私は人を探しています」 「そうなんですね」 「はい……メーメルと言う名前で、見た目は右が黒で左が銀色のウエーブがかったミディアムヘアの可愛い少女なのですが。どこかでみかけませんでしたでしょうか?」  それを聞き私は一瞬、知ってると言おうとする。だけど、ふとグレイが訳ありだと言っていたことを思い出す。 「いいえ、知りません」 「そうですか、ここにも居ないのでしょうか」  ガッカリしているみたいだ。悪い人にはみえない。でも理由が分からない以上、下手に居場所を教えない方がいいと思った。 「あ、もしかしたらどこかで会うかもしれないので。その時は連絡を……って、どうしよう。連絡方法、」 「お心遣いありがとうございます。そうですね……」  そう言うとバックから紫のペンと便箋を取り出し私に差し出す。それを私は受け取った。 「これは?」 「それは、魔法が施されたペンと便箋。それに、送りたい方の名前を記載し紙に描かれている魔法陣に魔力を注ぐ。そうすれば、送りたい相手に届きます」  それを聞いた私は目を輝かせる。 「凄いアイテムですね。だけど送るにも名前、」 「そうでした! これは失礼……。私は、ムドル・サルベドと申します」  そう言いムドルさんは軽く頭を下げた。 「私は、ルイ・メイノです」  私も軽く頭を下げる。  その後、ムドルさんはメーメルを探すと言いこの場を離れた。  それを見送ったあと私は、ペンと便箋をバックに仕舞う。それから私は、三人の男たちが倒れている場所から遠ざかり移動する。  そして木の長椅子に座ると、再びムリゴを食べながらグレイを待った。
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