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コテージを出ると、夕陽に照らされた水面が柔らかい光を帯びていた。 日本とは違う世界。 気温も空気も違う。 ビーチサンダルをひっかけ、いつもより薄着でフラフラと歩く。 ちょっと歩いただけなのに、しっとりとした汗を感じる。 たまに吹く潮風が心地よい。 管理棟に入ると、クーラーが私達を出迎えてくれる。 ケータリングルームには、出来立ての食事が用意されている。 ブュッフェ形式になっているから、好きなものを自分で取り、好きな所で食べられる。 冷めても美味しそうなモノを取り、ラップをかけた。 ラップも置いてあるって事は、みんな部屋で食べていたりするんだろうな。 「あんず、コレ美味しそうじゃない?」 「うん、美味しそう。私もやっぱりちょっと食べようかな」 「でた。色気より食い気」 「それはサヨも同じでしょ?」 「まー、否定は出来ない」 地魚を使ったアクアパッツァ。 見たことない色の魚と貝が使われている。 これは絶対温かい時の方が美味しいヤツだね。 一口食べて、後悔する。 これ、絶対白ワインに合うやつじゃん。 「サヨ、ワインが欲しい」 「でたよ。酒好き」 「白ワインが欲しい」 「でしょうね」 「置いてないのかな?」 「どうだろ?部屋にあるんじゃない?」 「部屋にあるのは、甘い白。これには辛いのが合う」 「知らないよ。聞いといで」 それはちょっと恥ずかしいよ。
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