ポッキーゲーム

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「絢音、ゲームせぇへん?」 「はい?」 とある昼下がり。 洗濯物を畳んでいた自分の横で、新聞を読んでいた藤次が不意に言って来たので目を丸くしていると、差し出されたのは、ポッキーの入った箱。 「おやつならさっき食べたじゃない。ご飯入らなくなるわよ?」 「ちゃうちゃう!これでゲームすんねん。」 「ポッキーで?」 不思議そうに首を傾げる絢音に、論より証拠とばかりに、ポッキーを一本取り出して、藤次は口に咥える。 「この端っこ咥えて2人で食べ進めんねん。で、先に口離した方が負け。簡単やろ?」 「えっ…じゃあ、口を離さないで全部食べたら…」 たちまち赤くなる絢音。計画通りと、悪戯っぽく藤次は笑う。 「キスすることになるなぁ〜」 「やりません!」 プイッとそっぽを向く絢音にしなだれかかり、藤次は耳元で囁く。 「絢音は、ワシとキス…したないの?」 付き合って1カ月、そろそろキスの1つもしてみたい。 そう考えていた矢先、新聞で見つけたポッキーゲームの記事。 イベントに託けて彼女と距離を縮めたいなど、我ながら女々しいと思いつつも、藤次は絢音を後ろから抱きしめて、反応を伺う。 「…だから。」 「へ?」 顔を真っ赤にした絢音の可憐な唇がゆっくりと動く。 「初めてするキスがゲームだなんて、嫌だから…」 「ッ!」 思わぬ反撃に、藤次の顔も真っ赤に染まる。 暫時の沈黙の後、藤次は意を決して絢音に問いかける。 「ほんなら、ゲームなしで、していい?」 「………うん。」 頷き、ゆっくりと瞼を閉じる絢音にドキドキしながら、藤次は顔を近づける。 「(あかん…可愛い…ええ匂いするし、睫毛めっちゃ長い…)」 高鳴る胸の鼓動を必死に抑えて、ゆっくりと目を閉じ、唇にキスをする。 サアッと、開け放っていたベランダから風が吹き込み、レースのカーテンがはためく。 ゆっくりと、時間をかけて唇を離すと、恥じらうように腕の中で俯く絢音。 「も、もう一回、するか?」 がっついてると思われたくないと思いつつも、欲求には抗えず提案してみると、不意にポッキーの箱に手を入れ、一本取り出す絢音。 「絢音?」 不思議そうに自分を見つめる藤次に向かって、絢音はポッキーを咥えた口を向ける。 「ゲームで勝ったら…する…」 「…ほんなら、勝たせてもらおうかな?」 可愛い彼女の返事に笑いながら、2人はポッキーが空になるまで、ゲームを楽しんだのでした。
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