2話:文章ちゃんと読まないからこうなる

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2話:文章ちゃんと読まないからこうなる

🎀  いつも通り、遊んでいただけだった。  細々とVライバーとしてインターネットの大海を彷徨いながらそこで出逢えた人と楽しくお喋りをして、それ以外の時間は家事や趣味の創作に明け暮れる。医者から処方された精神安定剤などの服薬を忘れずに行いながら、社会復帰のために地道に生活をする。  そんな日々が、梦視侘(ゆめみた)聖愛(まりあ)にとっての当たり前だった。  聖愛には最近ハマっているスマートフォンゲームがあった。【セイクレッドモンスターコレクション】、通称“聖モン”。某新牧場物語ゲームのように基本的に与えられた牧場で生活をしながらダンジョンに潜ってモンスターを退治したり住人の願いを叶えて報酬を得たり、プレゼントを渡して高感度を稼いだりするゲーム。そのゲームの中に登場する、仲間となってくれるモンスターのデザインは千差万別だが、可愛いモンスターも格好良いモンスターも少しイロモノなモンスターも揃っていてとても満足の行く素晴らしいスマートフォンゲームだ。聖愛はこの聖モンにハマっていた。どのぐらいハマっていたかといえばモンスター図鑑をコンプリートして全てのモンスターの好感度を最大値まで上げるぐらいにはハマっていた。代わりにゲーム内の街に居る住人キャラの好感度は最低限だったが聖愛はそれで構わなかった。そもそも街には依頼を受ける時と必要なものを買う時しか訪れず、あとは牧場内でモンスターと楽しく暮らし、時々ダンジョンに潜って素材を集める。そんな生活をしていた。  モンスター集めにリソースを極ぶりしたおかげで聖愛のプレイヤーレベルはカンストしていた。このゲーム、メインジョブとして【剣士】や【魔術師】などの攻撃系のスキル、サブジョブとして【鍛治職人】や【裁縫師】などが選べるのだが、メインジョブは【冒険者】でサブジョブは【錬金術師】を選択していた。  この【冒険者】というジョブは全てのジョブの能力が使えるが一定以上の能力は望めない器用貧乏なジョブで、剣やら魔法やらをオールマイティに使う聖愛には有難いジョブだった。  なにより、【錬金術師】のジョブがマリアには最高だった。回復薬が自分で作れる、武器の錬成に必要な鉱石も作れる。必要なものは大体自分で作れる。素晴らしいジョブである。【錬金術師】をオススメしていた攻略サイトとリスナーには感謝しかない。  そんなふうに聖愛の日々は満たされていた。お金は無いが娯楽はある。姉の脛を齧る結果となっているが、家から出なくたって生活できる。聖愛は現状に満足していた。  そんなだから、罰が当たったのかもしれない。  その日も聖愛は楽しく配信活動を行って、配信を終了してから聖モンのアプリケーションを開いた。そろそろ錬金術で作ったアイテムが完成している頃だからだ。  しかし普段なら制作会社のアイコンなとが順々に表示されていくはずなのに、今日は真っ暗な画面のままである。首を傾げていれば、【■■■■しますか?】のテロップが現れる。【YES】と【NO】のボタンまで設置されているそのコマンドに、聖愛は首を傾げた。聖モンはバグを起こすことが時々あるが、こんなバグは初めて見た。聞いたこともない。  だが、文字化けしているのは4文字である。きっと『ログインしますか?』と問われているに違いないと聖愛は考えた。画面が真っ暗なのはロードが間に合っていないだけだと。だから迷わず【YES】を押した。——それが、全ての始まりだった。
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