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「助けて、お願い……」
聖愛はスマートフォンを抱き寄せた。誰でもいい、助けて欲しい。
「助けて、ラビック……!」
聖愛は反射的にその名を呼んだ。セイクレッドモンスターの中で最初のパートナーとして出逢い、ゲームの中で苦楽を共にしてきたモンスターの名前だった。
次の瞬間、頬に生暖かい液体が触れる。同時におぞましいほどの血の臭いに目を見開けば、そこには二足歩行の豚だったものが立っていた。ただしその豚のような頭部は吹き飛び、血が噴水のように噴き出している。
そしてその豚の首を跳ねた存在が地面に着地し、こちらを振り返った。
「ラ、ビック……?」
それは、スマートフォンの液晶越しに何回も見たモンスターだった。兎のような姿をして、ボタンのような目を持つモンスター。ブードゥー教に似た魔術に用いられていたぬいぐるみが長い時間を経て魂を持ち意志を持ち動き出した存在。その両耳は変幻自在で、足の代わりに歩くことも刃のように敵を切り裂くことも出来る聖モン。
ラビックのぬいぐるみの口が、ニコリと笑った。そしてぴょんぴょんと跳ねて聖愛の方に飛び寄ると、もう大丈夫だよと言いたげに聖愛の頭を耳で撫でる。しかしその耳は首を切り裂いた時に血で染っていたから、聖愛の髪の毛にも血が付着してなんとも言えぬ気持ちの悪さがあった。
「助けてくれたの……?」
問えば、ラビックは頷く。
訳の分からない現実に、目眩がした。それでも目前に在った死をこの兎のようなモンスターが遠ざけてくれたのだと理解して、聖愛はどっと肩の力が抜けた。
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