おかえり

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「…俺で抜いてたんだ?」 元に戻ったパソコン画面で流れる伊織の動画と、とろとろのままの俺の下半身を見て伊織は言う。 「気持ちよかった?」 伊織が手を伸ばして俺に触れる。 温かい。 人間、ではありそう。 そのまま伊織に肩に担ぎあげられ、少し離れたところにあるベッドまで運ばれた。 「……え」 「想像じゃなくて、ほんとにしてやる」 …いや、伊織じゃない。 伊織はもっと丁寧な柔らかい言葉遣いをするし、こんな風に意地悪に笑ったりしない。 これ、誰だ。 「まっ…お前誰!?」 「誰でもいいじゃん…なんだ、ほぐれてる。こっち弄ってたのか」 男の手が、ついさっきまで俺の指が挿入っていた部分に触れる。 躊躇う事なく男は指を挿れた。 「っ…!」 「すげーしっかりほぐれてる。指何本挿れてオナッてたんだよ」 三本です…そんな事言えないけど。 やっぱり伊織じゃない。 伊織は『抜く』とか『オナる』なんてそんな…そんな事は口にしない! 「や…あっ! やだ…!」 「やじゃないだろ。俺のこれ、想像してたんじゃねえの?」 指が抜かれ、既に昂っているものが押し当てられる。 こんなわけわかんない状況なのにゾクゾクしてしまう。 男の昂りがナカへと滑り込んでくる。 「あ…あ」 「…きっつ」 どうしよう、指と全然違う。 伊織にそっくりな男のもので奥までいっぱいになってる。 伊織じゃないのに、興奮が止まらない。 男が動く。 「あっ! や…あっ! あ、あ…」 「…お前、名前は?」 「…? 千紘…っ…ああっ!!」 男がぐっと奥を突いて、俺は簡単に達してしまう。 奥突かれるのがこんなに気持ちいいなんて…ほんとにどうしよう。 「千紘…」 「あ、ひぅ…っ!」 男が容赦なく奥を繰り返し突く。 俺がイき続けるのを男は意地悪な瞳で見つめる。 「…お前も呼べ」 「…?」 「俺の名前」 名前って…なに? この男は伊織にそっくりだけど、伊織ではない。 「…なまえ、知らな…」 「だから伊織だって。知ってんだろ」 「ひっ、あ…やだ、奥だめ! だめ、またイく!」 「…っ、千紘、俺もイきそ」 「…っ!!」 伊織の声が俺の名前を呼んで、想像じゃなくて本当に俺のナカでイくって言ってる。 この男は伊織じゃない…わかってるけど、今だけは伊織だと思ってしがみ付く。 「いおり…いおり、ぃ…っ!!」 「っ…」 俺の限界と同時に伊織がナカに熱いものを注ぐ。 なにこれ、気持ちよ過ぎる。 「千紘…」 熱く俺を呼ぶ声を聞きながら、意識が薄れていった。 ……。 「…?」 なんか妙にあったかい。 瞼を上げると…。 「!?」 岡伊織が俺の隣で寝ている!? ………。 違う、伊織じゃない。 この男は伊織じゃない。 そして伊織じゃない男に、俺は抱かれてしまった。 「…伊織にそっくり」 頬に触れてみる。 パソコンの画面から出てきたのに人間のようで、頬は柔らかくて温かい。 「……ほんとに何者?」 「だから伊織だって言ってんだろ」 「!?」 伊織にそっくりな男の瞼が上がる。 「お前がオナニーに使ってた岡伊織」 「…ほんとに伊織、なの?」 自分は岡伊織だと言う男が身体を起こす。 昨日はよく見てなかったけど、引き締まった綺麗な身体。 今更だけどどきどきする。 「そうだって何度も言ってんじゃん。千紘、仕事は?」 「今日は土曜だから午前中だけ」 「なにしてんの」 「病院の受付」 「そ」 伊織(?)が俺を『千紘』と呼ぶ。 これ、絶対現実じゃないか、この男がやっぱり伊織じゃないか、もしくは俺の頭がおかしくなったか。 でももう出て行くだろうし………出て行くってどうやってだ。 まさかパソコンの画面に入っていくって事は…ないよな。 俺がそんな事を考えていると。 「しばらく置いてくんない?」 伊織(?)はそう言った。
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