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「レジ袋はご利用になりますか?」
仕事帰り、自宅近くのコンビニに寄る。
いつもと同じ、缶ビール二本とおつまみ。
会計をしてもらっていると。
「――――?」
なにか聞かれた。
ワイヤレスイヤホンを着けっぱなしなのを忘れていた。
いつもはレジ前で片方外すんだけど…。
たぶん、『レジ袋はご利用になりますか?』だろうと思って。
「はい。お願いします」
そう答えた。
するとなにか弾んだ声がイヤホン越しに聞こえる。
「?」
イヤホンを外して視線を上げると可愛い女性の店員が俺を見て頬を染めている。
「ありがとうございます! これからよろしくお願いします!」
「は?」
「あ、レジ袋ご利用になりますよね?」
「え…はい。お願いします」
さっき聞かれたのはレジ袋の事じゃなかった?
「えっと…」
「すごく嬉しいです。ずっとあなたの事、素敵だなって思ってて。勇気を出して告白してよかった…」
告白!?
「あの、…すみません」
「はい?」
「えっと…それ、もう一度言ってもらってもいいですか…?」
ほんとは聞いてなかったからなんて言ったか教えてって聞いたら傷付けそう。
「『ずっと素敵だなって思っていました。よかったら付き合ってもらえませんか?』…ですか?」
「………」
それに俺は、『はい。お願いします』と答えた。
マジか。
店員さんの顔を見る。
アイドルでもやっていけそうな、かなり整った可愛い顔立ち。
大学生くらいか。
身長は俺よりは低いけど、女性にしては高め。
艶のある黒髪はショートカットで、たぶん触ったらさらさら。
「………」
可愛い子だから、まあいいか。
でも、ずっと素敵だと思ってたって…俺は素敵だなんて言われた事ないんだけど。
言われた事のある褒め言葉って言えば、『普通だね』。
…言った人にとっては褒め言葉なのかわかんないけど、天地がひっくり返ったって『イケメンだね』なんて言われる事がない俺にとっては最大の褒め言葉。
「何時に上がるの?」
「え?」
「自宅近いから、上がる頃にまた来るよ」
俺が言うと女の子はぱあっと微笑んで頬を更に染めた。
上がる時間を聞いたらもうすぐだったのでこのまま待とうかな、と考える。
そう言えば名前を知らない、と思いネームプレートに視線を向ける。
そこには。
『横山天志』
………。
天志って…男…?
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