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「メッセージ何度送っても返信なくて透のスマホの位置情報見たら雅臣のマンションだったからタクシーですぐ向かった」
「位置情報?」
「うん。万が一の時のためにね、確認できるようにしてあるの」
「そう…」
汗ばんだ身体を抱き締め合いながら疑問を投げかけると、知颯はあっさり答えてくれた。
そんなに長居するつもりはなかったから今川くんのところに行く事は言ってなかったのになんで俺がいる場所がわかったんだろうって思ってたから。
「ほんとは透にもちょっと怒ってるんだから。俺に黙って雅臣の部屋に行ったりして」
「…うん。ごめんなさい」
「怖かったよね…」
よしよしと頭を撫でてくれるので、素直にされるまま甘える。
心地いい。
「知颯が助けてくれたから大丈夫だよ。ありがとう」
ぎゅっと抱きついてお礼を言うと、知颯は大きく息を吐く。
「透…、もし透が誘拐とかされて今回みたいに無理矢理なにかされそうになって、それが命に関わる事だったら抵抗しないでね」
「…?」
「なにがあっても透の全てを受け止めるから、透は絶対生きて俺のところに帰ってきて」
「……うん」
優しく微笑んで俺の髪を撫でながらそう言ってくれるので、俺はほっとする。
俺の全てを受け止めてくれる…それだけですごく心強い。
知颯がすっと真顔になる。
「報復は俺がする」
ぞっとするような冷たい瞳。
知颯のこんな低くて怖い声聞いた事ない。
思わず身体を強張らせると、知颯がぱっと笑顔に戻って安心させるように優しくキスをくれる。
「…ほう、ふく?」
「透を傷付けたらそれなりのものを受けてもらわないとね」
「……」
笑顔なのに言ってる事はやっぱり怖い。
「知颯、今川くんになにかしたりしないよね…?」
「透はなにも心配しなくていいんだよ」
甘いキスをくれるけど、今は蕩かされてる場合じゃない。
キスをしようとする唇を手で覆って、正面からまっすぐ知颯を見つめる。
「しないって約束して」
「…なんで? 雅臣をかばうの?」
知颯の瞳が切なげに揺れる。
「違う。知颯を守りたい」
「…?」
「知颯が俺になにかあったら嫌なように、俺だって知颯になにかあったら嫌だ」
「……もう」
知颯がぎゅうっと抱き締めてきて、唇を覆う俺の手をどかしてキスを降らせる。
徐々に深くなるキスにくらくらする。
また興奮してるのか、知颯の吐息が熱い。
「そういう可愛い事言うから、透ってほんとにいい」
「いい?」
「うん。大好き」
なんとか大丈夫そう…?
知颯が犯罪者になったりしたら嫌だし、今川くんになにかあっても嫌だから、なにもしないで欲しい。
なんだかあぶない男に捕まったみたいだけど、今更逃げたいとも思わない。
だって知颯が俺の一番だから。
一番大好きで、一番かっこよくて…少し怖い。
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