きみをください

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◇◆◇ 起きてスマホをチェックすると結人さんからメッセージがきていた。 『おはよう。昨日はありがとう』 送ってもらったのは俺のほうなのに…やっぱり変な人だ。 こういう時ってなんて返したらいいんだろう。 ていうか、相手が自分に好意を持ってる場合の接し方なんてわからないんだけど。 『おはようございます。俺のほうこそありがとうございました』 しばらく悩んだ挙句、無難にそう返した。 それから簡単な朝ご飯を食べて店に行く準備をする。 もう仕事中なんだろう、結人さんからの返信はなかった。 そしてまたランチタイムになる。 お客さまがひとり、またひとりと来店されてどんどん席が埋まっていく。 そこにいつものように結人さんが来て、空いた席に座った。 「焼き魚定食をお願いします」 「はい。かしこまりました」 いつも通りだ。 オーダー伝票に注文を書き込んでからちらっと結人さんの顔を見ると目が合って、唇が“啓真”と動いた。 また心に波紋が起こって、慌てて結人さんの席を離れる。 …変なのは俺のほうかもしれない。 ◇◆◇ 「は…む」 まかないを食べながら溜め息を吐きそうになって呑み込む。 いけない。 これじゃ完全に結人さんのペースだ。 …いや、もうすでに結人さんのペースか。 俺はそれに呑まれてあわあわするしかできない状態。 「橋本くん、よかったらちょっと散歩でもしてきたら?」 「散歩ですか?」 「そこの公園、桜が綺麗だったよ」 一さんの勧めもあって、散歩に行く事にした。 近くにある公園に行くと桜が満開で本当にすごく綺麗。 思わずさっきの溜め息とは違う溜め息が零れる。 はらはら舞う花びらの中でぼんやり立って桜を見上げる。 それからたくさんあるビルを眺めてみる。 この中に結人さんの働く会社があって、結人さんがいる。 不思議な感じ。 「……」 俺、結人さんの事ばかり考えている。 だってあんな事言われたらどうやったって考えてしまう。 額にキスされたし。 「……はぁ」 結人さんの事を考えてしまう理由を探している自分に溜め息。 これじゃ本当に意識してるみたいだ。 もう一度溜め息を吐いてから店に戻った。
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