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ホームに降りて、改札に向かう。
吹き付ける風が髪を乱すけれど、顔はやけに熱い。
隣を歩く大貴は喋らない。
土曜日の20時、寂れた地元駅に私たち以外に人はいない。
「……今から俺はお前の事を名前で呼ぶ」
「んへ?」
券売機の端で、唐突に話し始めた大貴に思わず気の抜けた声を返してしまう。
「…ま」
「…」
呼ばれる前からもう胸が熱くなる。
「…愛美」
知らなかった。
名前を呼ばれた、それだけで
こんなにも愛しいと思えるなんて。
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