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お祭り
「千暁くん、お待たせ…っ」
「ちょうど俺も来たところだ。」
長いような夏休みも折り返しとなった頃、蛇川村の神社ではその日、お祭りが行われていた。
待ち合わせをしていた千暁と勇人は挨拶を交わす。
「この後、他にも人が来るの?」
「ああ、律樹が。」
「えっ、律樹くん!?」
なぜか勇人は驚いたように目を瞬かせていた。
「俺が来たら、悪いかよ?」
その時、現れた律樹は勇人の肩を叩く。
勇人がビックリして大きく跳ねた。
「わあっ!り、律樹くん!
…い、いや…悪いわけではないけど、律樹くんは学校では有名人だから…ッ」
千暁は律樹に目を向ける。
「…よくわからんが、そうなのか?」
律樹は少し目をそらす。
「知らねーよ。周りが勝手に騒ぐだけだ。
それより、千暁。
お前がなんでこんな弱虫を連れてんだよ?
放っておけよ。」
律樹はなぜか気に入らなそうだった。
「小学校の頃、友達だったからだ。
律樹、昔はお前だって勇人と仲良くしてたのに、どうして…。」
「俺は弱い奴は嫌いだ。
糞みてーな連中にカモにされても、助けを求める訳でも抵抗するわけでもなく、むしろ連中に餌を与えて自らカモになってやがる。
自分の意思もろくに示せねぇ弱虫は友達じゃねぇ。」
律樹は吐き捨てるかのように言い放っていた。
「律樹。」
千暁がなだめると、慌てて勇人が言う。
「律樹くんの言う通りだから、良いんだよ…。
俺は千暁くんに助けてもらうまで、本当に何もできなかったから…。
…それより、せっかくだしお祭りでも見ようよ。
明るい気分が台無しだよ。」
「ちゃっかり祭りにはついていく気かよ。
…意外と図太い奴だな…お前。」
律樹に呆れた目線を向けられ、勇人は冷や汗を掻いたように見えた。
ぎこちなさはややあるものの、三人で祭りを見て回っていた。
狭い町内での祭りでは、当然昔からの友人たちにも遭遇するわけで、懐かしい面々と顔を合わせる。
そんな中で律樹が射的をしていて、勇人が焼きそばを買いに行ってる間、千暁はある者達と会っていた。
「やっほ~!千暁!また会ったねー!」
「千暁、お祭りに来てたんだね。」
明るい春と、おっとりした蒼真の二人と遭遇していた。
「お前達も来てたのか。」
「うん!兄さんがたまには友達と楽しんで来いって言うからさ~!」
「こんな調子で、春がずっと夏の話ばかりしてるから。
千暁に会えてちょうど良かったよ。」
「そうか。俺も二人に会えて良かった。」
しばらく三人で言葉を交わしていると、律樹と勇人が戻ってくる。
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