お祭り

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 「春、蒼真(そうま)、お前らも来てたんだな。」  「春くんと蒼真(そうま)くんまで! 今日は懐かしいメンバー大集合だね。」  二人が言うと、春は楽しそうに笑い、蒼真(そうま)は淡く微笑(ほほえ)んだ。  「お喋りもこの辺にして、僕は勉強の為に、そろそろ帰ろうかな。 春も兄さんが待ってるんじゃない?」  「そうだった!あんまり遅いと怒られる! バイバイ、皆!また機会あったら遊ぼうね~!」  春と蒼真(そうま)は去っていった。  「あっさり居なくなったな。 まあ、長くなっても困るから、良いけどな。」  (つぶや)いた律樹(りつき)は、少し落ち着かなそうに辺りを見た。  「どうかしたのか?律樹。」  「いや…なんかさ、最近、誰かに見られてるような、変な感じがして…。今日も…。」  いつもは強気で意思が強い律樹(りつき)が、どこか不安そうに辺りを見ながら言った。   「大丈夫か?今日は早めに帰るか?」  「あー…いや、むしろ、家とか人混みの方が気になるんだ。 お前の家にいる時は大丈夫で、なんとなく安心出来るというか。」  「それはうちに来る口実じゃないだろうな?」  「は!?…ばか、こっちはマジで言ってんだよ。」  どこかぼんやりと(つぶや)律樹(りつき)。 勇人が思い出したように言う。  「…律樹(りつき)くん、霊感とかないの?」  律樹(りつき)が勇人を睨んだ。  「あるわけねーだろ、そんなもん。 つーか、ふざけてんのか? こっちはマジだってのに。」  「違っ!そんなんじゃないよ!俺だって心配して!」  「ハイハイ。…俺も悪かったって。 でも今は真剣に、幽霊にでも憑かれてんじゃねーかって、そんな気分にもなるわな。」  律樹(りつき)が頭痛でもするのか頭を抑えながら歩いていた時だった。  律樹はある者とぶつかる。  「きゃっ」  「あ、悪い。…って、なんだお前か、花菜(かな)。」  「誰かと思ったら、律樹(りつき)! もう、急にびっくりしたわ。」  それは美少女だった。  可憐で長い黒髪がよく似合う、淡麗(たんれい)な少女。  いくら中性的で綺麗な律樹(りつき)と言えど、その者と並ぶと、律樹(りつき)は改めて男なのだと認識するほど小柄で愛らしい少女だった。  少女の眼差しが律樹(りつき)から、千暁と勇人に向いていた。  「あれ…勇人と、もしかして千暁?」  その時、記憶の彼方(かなた)にいた小学校の頃の同級生と面影が重なる。  「誰かと思えば、三好花菜(みよしかな)か。 久しぶりだな。」  三好花菜(みよしかな)律樹(りつき)と家が近所同士で、一番に近い関係にあった幼馴染みだ。  「ずいぶん大きくなったわね、千暁。 勇人は小さすぎて、逆に千暁に隠れられそうね。」  「え!?」 花菜(かな)の言葉に勇人が涙目になった。  千暁は、花菜(かな)律樹(りつき)に目を向ける。  「…その、俺らは空気を読んで先に帰った方が良いか?」  「ちょっ!私と律樹(りつき)はそんなんじゃないから!!」  「はあ?なんで俺と花菜(かな)の空気を読んで、お前らが帰るんだよ? 勇人は良いとしても、お前まで帰る必要あるのか?千暁。」  赤面した花菜(かな)と、悪態をつく律樹(りつき)の声は同時に発せられた。  花菜は恥ずかしそうにうつむいた。 それで花菜の思いは一方通行なのだと、千暁は(さと)る。
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