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「…なんで俺ばかり色々言われてるんだろう…。」
勇人が悲しげに呟いた。
千暁は髪を掻きあげながら、息をつく。
「…とりあえず、皆で帰るか…。」
なぜか四人で、花火を見ながら歩いた。
「千暁、今日家に泊めろよ。
どうせお前しか居ねぇだろ。」
千暁は律樹に目を向け、それから花菜を見る。
花菜が酷く悔しそうにこちらを見てくるのが、不憫に思えて、千暁は首を横に振っていた。
「いや、今日は帰ったらどうだ。
泊まるのなんて別の日にでも出来るし。
今夜は花菜を家まで送ってやった方が良いだろ。」
「花菜の家なんてどうせ隣なんだから、送るも糞もねーよ。
なんだよ、今日のお前はなんかムカつく。
…ばか千暁。」
律樹が不貞腐れたように、千暁を睨んだ。
「…意味がわからない。」
道中の帰り道、一足先に律樹と花菜と別れて、千暁と勇人は歩いていた。
「そういえば律樹くん、大丈夫なのかな。
体調悪そう…というか、何だか疲れてるみたいだったけど。」
「確かに。明日、顔を見せにでも行くか…。
お前も来るか?勇人。」
「お、俺は遠慮しておくよ…。
律樹くん、俺には怖いし。」
勇人は不思議そうに首をかしげる。
「でも不思議だよね。誰もいない時にこそ霊的なものは現れたりするものなのに。
人がいたり、家で変な感じがするなんて。
今までだって可笑しい事とか、昔から何もなかったのかな…?」
「律樹が、千暁の家に泊めろって言った時はどうなることかと思ったけど…断ってくれてよかった。
…そのおかげで、今日も私の可愛い律樹の生着替えを堪能できるんだもの…。」
薄暗く鍵のかかった部屋で、花菜は室内に何個もあるモニターのうちの一つを凝視していた。
そこには着替え途中の律樹が映っており、花菜は興奮したように舌を舐めた。
「…あのよそ者のゴリラ、私の律樹を独り占めしやがるから、さっさと死んでくれないかな…。
あのゴリラが私の律樹を誘惑するせいで、律樹は行きたくもないゴリラの家に毎日のように行かされて…本当可哀想。
私の可愛い律樹が汚れるわ…。
あいつ、私の律樹に手を出してないよね…?
もしあの穢らわしいゴリラが、私の律樹に手を出してたら…」
花菜はその時、吐瀉物を床にぶちまけていた。
室内に置かれたいくつかのモニターには、律樹の家のありとあらゆる場所が移し出されていた。
部屋、リビング、トイレ、風呂場、玄関と、ありとあらゆる場所に隠された監視カメラによって、どこに律樹がいても、常に律樹を監視できるようになっていた。
花菜はベッドの上で寝転がる律樹を見て、口を拭う。
「はあ~…早く死ねよ…糞ゴリラが…。
それかさっさと消えろ…。
いっそのこと、ゴリラの家にもつけよーかな…監視カメラと盗聴機。
そうすれば、ゴリラの家にいたとしても律樹を見る事が出来るし…。
あ…そろそろ律樹の鞄につけてるGPSの充電しなきゃ…。」
隠し撮りしたと思われる律樹の写真まみれの室内で、花菜はヘッドホンを頭につけながら、そんな事を呟いたのだった。
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