幼馴染み

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 次の日、千暁(ちあき)がダラダラとだらけながら家にいた時、チャイムが鳴った。  その後立て続けに何度も鳴らされ、暑さで動く気がなかった千暁でも、さすがに動かざる得なかった。  「はい。」  アキラが遊びに来たのか、と思いながら玄関を開けて、千暁(ちあき)はまた驚かされる。  「誰かと思えば、律樹(りつき)…! 遊びに来てくれたのか?  昨日と今日は驚かされてばかりだな。」  「うちの婆ちゃんが昨日、千暁(ちあき)によく似た大男を見かけたって聞いてよ。  まさかと思えば…本当に帰ってきやがったみてーだな。」  口は悪いが、その声音と表情は明らかに嬉しそうに(はず)んでいた。  「…はあ~…クソ暑ぃから、上がって良い?」  「ああ、熱中症になったら大変だ。 扇風機あるから上がるといい。」  千暁(ちあき)は暑そうな律樹(りつき)を迎え入れていた。  律樹(りつき)もアキラと同じように小学生時代の友人の一人だった。  アキラが田舎のやんちゃ坊主だとすれば、律樹(りつき)は辺境の田舎の村にいるとは思えないほどの美少年だ。  その姿は中性的で、成長した高校生の今も変わらずに綺麗な天使だった。  大柄でガタイが良い千暁(ちあき)と並ぶと、律樹(りつき)は少女のように背丈が低く華奢(きゃしゃ)だ。  律樹(りつき)千暁(ちあき)を見上げ、呆れた声を()らす。  「なに食ったらそこまで図体(ずうたい)でかくなれんだ? 都会行ったら、皆そうなるのかよ?」  千暁(ちあき)は首をかしげていた。  「なにもしていない。」  「はぁ!?ずりぃッ! 俺なんて毎日牛乳飲んでるし、婆ちゃんの言う通り早寝早起きしてんだぜ!?」  昔と変わらず小生意気で愛らしい律樹(りつき)に、懐かしさを覚えていた。 千暁(ちあき)は笑みを溢す。  「なに笑ってやがる。千暁(ちあき)。」  「別に…。ただ、連日、幼馴染みに会えるのは嬉しいな、と思ってな。」  「ふーん?昨日も誰か来たのか? 俺でさえ話を聞き付けたのは今日なのに。」  「…あれ?連絡したのは律樹(りつき)じゃないのか? 昨日の夜にも、アキラがうちに来たんだ。」  千暁(ちあき)が淡い笑みを溢しながらそう(つぶや)いた時、律樹(りつき)怪訝(けげん)に眉を(ひそ)めた。  「はあ?俺が婆ちゃんから話を聞いたのは今朝の話だぞ? …それに、アキラが来るわけねーだろ。」  「律樹(りつき)、お前は何を言っているんだ? 昨日確かにアキラはうちに来た。」  すると律樹(りつき)の表情はますます困惑したように歪む。  「アキラが………?アキラは中三の終わりに事故って何年も前に死んだんだぞ? 千暁(ちあき)、お前は夢でも見たんじゃねぇのか?」  「は………?」  昨晩の時点で、色々とおかしいとは思っていた。  昨日、千暁がこの村に来ることは、親戚以外の誰も知らない。  しかしアキラは、千暁が電気をつけてほどなくしてやってきたのだ。 千暁はあの時、アキラを見たはずだった。 千暁が見たのは、何だったのだろうか?  その瞬間、アキラの笑い声が聞こえたような気がして、千暁は言い様のない寒気がした。
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