氷奏妖の歌

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私は凍えながら震える体を抱きしめる。 唇は真っ青で、全身は真っ白。 頭上の樹の枝のおかげで雪に全部体が埋もれることはないけれど、すでにくるぶしまで氷水に浸かったような感覚があってピリピリと痛かった。 カタカタと小さく震え続ける。 きっと私は、男が言うように“ピカピカ青っちろい氷細工“にでもなってしまうのだろう。 つまり言葉を変えれば、凍死すると言うことだ。 ————寒い…… 夜がくる。朝がきて、日が暮れて……また夜がくる。 金色の太陽がぐるんと一周し、銀色の月が闇にぼうっと光り出す。星も雪も、ひらひらキラキラ小さくてたくさんあるのが似ているなぁ、と私は思った。 ————寒い…… 私は震え続ける。 何日も。何年も。ずっとずっと。 その間、男は一度だって私に会いに来なかった。……有言実行の男は格好いいから好きだ、と私は思った。 ————寒い…… 命の灯火が、燃え尽きる。 あぁもうだめだな、と思った夜が、私の命日。 あっさりと死んだ。 まるで眠るような感覚。 ぼうっと意識が抜け出てゆくような。この世の全てとおさらばするような。不思議に快くてちょっとゾクッとする。 ……ふふ、けっこう面白いじゃんか。と、そんな思考が最後となる。 青白く透明に凍った氷の塊が、私の骨であり墓標だった。 ♢
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