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階段横のドアを開けた。そこは納戸で、人の姿は無い。
奥のドアを開けた。タンスが倒れていた。
「家具が乱れている、2階まで爆発の衝撃で揺れたようだ」
タンスの下に人がいると気づいた。
「要救助者を発見した」
報告して、タンスを持ち上げる。機械の腕力で、一気にひっくり返した。
女性である。体にかかるタンスの重みが無くなり、大きく息をする。が、部屋に満ちた煙を吸い込む事になった。
路傍は左大腿部のホルダーを開いた。酸素マスクを出した。
マスクのチューブが路傍につながっている。酸素は十分にある。
「大丈夫、ゆっくり息をして」
マスクを女性の顔にあて、両手をマスクに導いた。むせながらも、自力で息をする。タンスの圧迫で、煙を吸わなかったのが幸いしていた。
見上げれば、部屋の天井も温度が100度近い。
ヘルメットが熱くなる。冷却も間に合わなくなってきた。
「脱出する」
路傍は両手で女性を抱えた。足が悪いと聞いていたから、抱いた方が早い。
廊下に出た。煙が床まで充満している。
階段を降りると、1階の廊下は水浸し。玄関の外から放水が来ていた。体感温度が下がる。
「玄関への放水を止めてくれ。出られない」
『了解、伝えます』
友里が答えた。
外にいた消防士が階段の路傍に気づいた。合図して、放水をそらした。
路傍は女性を抱えて、玄関から外に出た。
と、ボウ、大きな音と共に、屋根から炎が噴き出した。火柱が立ち、周囲に火の粉が降り注ぐ。
急げ、と消防士が手招きする。
「この先は、みなさんにお任せだな」
路傍は頷き、小走りに家を離れた。
「やったぞ、さっそくの初手柄だ!」
鐘本はスクリーンに向かって拍手した。
「元がベテランだから、冷静に救助できた。サイボーグでも、新人がベースでは、こうはいかない」
消防管制室に自画自賛の声が響いた。
路傍が女性をストレッチャーに置いた。この先は救急隊員の仕事だ。
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