5.サイボーグ消防士 出動!

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 路傍は燃える家を見た。  三角の屋根が蒸気の白煙を上げていた。延焼防止で屋根に水がかけられていた。  黒煙は1階の窓から出ている。火元だろう。普通の消防士では、もう少し煙が落ち着かねば、中へ入れない。 「これは、確かにオレの出番だ」  肯いて、玄関に向かった。  外に開いた玄関ドアが傾いていた。中を見れば、靴箱が倒れて、中身が散乱している。 「これは・・・爆発だろうか。衝撃波が廊下から玄関へ抜けた。家具を倒し、玄関ドアを歪ませた」 『ガスの地中管の栓を閉じる作業をしている。間もなく、ガスは止まる』  友里から報せが来た。 「了解、中へ入る」  路傍は報告して、煙の中へ入った。 「まっ、まずい」  黒馬は画面の路傍に向かって言った。 「何が、まずいと?」  鐘本が首を傾げた。 「酸素ボンベ無しで煙の中へ行くのか。窒息するぞ」 「ああ、それなら背負ってますよ」  鐘本は路傍の背を指す。 「小さいだろ。数分も保たないぞ」  路傍の背には1型バックパックがあった。2リットルのペットボトルほどの大きさだ。 「あれは液体酸素のボンベです。気体の千倍も実容量があります」 「千倍!」 「ただし、液体なので、温度は零下160度。普通の人が背負ったら低温火傷を起こします。路傍氏の場合は、火災現場で熱くなる体を冷やし、その上で、生体部分に酸素を供給します」 「冷やして・・・」  黒馬は目をパチクリさせた。 「煙が濃い。カメラを切り替える」  右目の義眼を可視光から赤外線へ変えた。可視光では見通せなかった。赤外線では解像度が低くなるが、何も見えないよりましだ。  廊下とつながる階段を見つけた。 「要救助者は2階にいるらしい。上へ向かう」  階段を上がると、2階廊下の天井が輝くように見えた。赤外線で見てるので、温度が高い部位は光が強くなる。 「天井板の温度が100度に近い、発火寸前だ」  報告しながら奥へ進んだ。
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