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7.武装消防官よ 銃を抜け
東京都龍如区桐生消防署の車庫の奥、コンテナハウスの寝台に路傍伊四郎は寝ていた。眠ってはいない、メンテナンス中である。
ウエラーとアレンによって、腹部のハッチが開かれ、人間の部分をリフレッシュさせる。
「尿袋を交換、内容量150cc」
「オストメイト交換、内容量83グラム」
手足が無いので、人間としての代謝は少ない。それでもゼロではない、出るものは出る。
今日はティペット博士が来ていた。
尿のサンプル、便のサンプル、血液のサンプルをカバンに入れる。
「現場に出て、興奮したら、安静時とは違う反応が出るか、と思ってました。今のところ、新たな拒絶反応はありません。問題は無いようですね。もう少し様子を診て、追跡データのシンプル化ができるか、判断をしましょう」
「まだ、家に帰れない・・・」
ぼそり、伊四郎はつぶやいた。
うん、バーホーベンが肯いた。
「そうよね、自力で排泄物の処理ができないのは、欠陥に近いわ。優秀な消防士を再生する計画ではあるけど、人間の尊厳を維持する計画ではなかった。あなたの人間的な生活をとりもどすのは、次のステップになるわ」
うーむ、伊四郎は目を閉じた。
ポン、ティペットは肩をたたいた。
「きみの妻という人は、機械のメンテとか得意かな。あるいは、コンピューターのソフトメンテとかは?」
「車の運転は好きなほうだが、機械いじりはちょっと。スマホは触ってるようだ」
「看護や介護の資格は?」
「今は子育てに忙しい。息子は3歳だ。もうすぐ、2人目が産まれるはずだ」
おおう、バーホーベンとティペットは首を振る。
「家庭への復帰は、まだまだ将来の課題ね。当面は消防士としての実績を積んで、次のための予算を確保できる状況を作りましょ」
「家庭・・・夫への復帰は不可能だけどね」
伊四郎は自虐して笑った。
ジリリリ、出動ベルが鳴った。
路傍はベッドを降りる。
「1級火災、1級出動!」
インターホンが報せた。今度は大きな火事らしい。
「行ってらっしゃい」
バーホーベンとティペットは手を振り、見送る。
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