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夜八時。お店の開店時間、僕は緊張していた。
「花梨?大丈夫?顔が怖いわよ…。
もしかして…緊張してる?」
マチコさんとランさんが心配そうに僕を見つめている。
僕は首を横に振って笑った。
「大丈夫です。いつもママの接客見てましたから。僕にだって出来るはずです。
ママの子供ですから。」
「そうね。花梨には才能があるわ。
料理上手だしね!
期待してるわ。」
「自分も応援してますよ!
花梨さんなら大丈夫です!
それに、うちは常連客がほとんどですからね。
知ってる人ばかりですよ。」
「そうね…。新規のお客さんって滅多に来ないわね…。私的には新しい男に出逢いたいんだけどね…。最近若い男に飢えてるのよね…。
花梨みたいにピチピチの可愛い子が欲しいわ。」
マチコさんは最近彼氏と別れたばかりだった。
同棲していた彼に逃げられたと、この前騒いでいた。僕は恋をした事がないから、マチコさんの気持ちが理解できなかった。
恋ってそんなにいい事なのだろうか?
僕にとっては未知の世界だった。
三人で話していると、店の扉が開き、一人の常連客が入ってきた。
「いらっしゃいませ。
あら、マモルさんじゃない。
久しぶりね。」
「あれ?今日、ママはいないの?」
「そうなのよ…。ミドリさん旅行中なのよ。
今日は私と飲みましょうよ。
おすすめのお酒あるのよ。」
お店に入ってきたのはマモルさんという、サラリーマンの人だった。
いつも、立派なスーツを着こなしている、大人の男性だ。
ママがお店を初めてすぐ位からの常連さんらしく、ママの事が大好きみたいだった。
ちょっとガッカリした顔で、その人はマチコさんと一緒に店の奥のテーブル席に座った。
店にはカウンター席六脚と、テーブル席が
四卓ある。
そこまで広い店ではないが、いつも満席になるほど人気があった。
大体のお客様が、カップルで来店する。
勿論ゲイのカップルだ。
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