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第二話 初めての言葉
「どうしよう…。マチコさん…。ママに何て言えばいいんですか?」
「もう、起きてしまった事は仕方ないよ…。
正直に言おう…。」
「えぇ⁈自分言えないっすよ…。
ママの怒る顔が目に浮かぶっす…。」
僕はお店の階段下で、こっそり二人の会話を聞いていた。
多分二人は僕の身に起きた事を話しているのだと思う。店に出て行きたくても何故か体が動かなかった。
僕はしばらく階段に座り込んでいた。
すると、お店の扉が突然開いて、ママとミカさんが帰って来た。
「ただいま。花梨ちゃん!帰って来たわよ!」
「あっ、ママ…。おっ…お帰りなさい…。」
「もう、ミドリったらずっと花梨の事ばっかり心配して、落ち着きがなかったのよ…。せっかくの温泉だったのに…。」
「あれ?花梨ちゃんは?
まだ寝てるのかしら?」
僕は、お店の階段下の扉から様子を見ていた。
マチコさんとランさんが困った顔をしていた。
「ママ…。花梨の事なんだけど…。
実は…。」
マチコさんが、昨日の事をママに話そうとしていたから、僕は思わず扉から飛び出した。
二人には、迷惑をかけたくなかった。
ママには自分で話した方がいいと思った。
「ママ!ミカさんお帰りなさい!」
「あーん!花梨ちゃん!会いたかったわ!」
ママが僕に抱きついてきた。
僕は、とても複雑な気持ちだった。
「ママ…。たった一日でしょ…。
もっとゆっくりして来れば良かったのに…。」
ミカさんもガッカリした顔で言った。
「本当にその通りよね…。
私はゆっくりしたかったのよ…。
まぁ、仕方ないわね…。
花梨への愛には勝てないわ…。」
「ママ…実はね…昨日…。」
僕は、ママに昨日の出来事を全て話した。
ママとミカさんはなかり驚いていた。
「なっ…何ですって⁈」
僕の話を聞いてママは、マチコさんとランさんの事を睨みつけた。
「あんた達!どういう事なの?」
「ママ!マチコさんとランさんは接客してたし、何も悪くないよ!
悪いのは油断した僕だから。
二人の事は怒らないであげて!お願い。」
「なんて優しい子なのかしら…。
それにしても…そいつは何者?
私の愛する花梨ちゃんに、いきなり手を出すなんて…。
許さないから!」
僕の話を静かに聞いていた、ミカさんが言った。
「ミドリ…。私思うんだけど…確かに突然キスするのはどうかと思うけど…それって恋の予感なんじゃないの?
ミドリだって、花梨と恋バナがしたいとか言ってたじゃない!」
「なっ、何言ってるのよミカ!
花梨ちゃんが…こっ、恋⁈
確かに恋バナはしたいわよ…でも…
そんな突然唇を襲うような子なんて、信じられないわ…。」
「だって、それって花梨に一目惚れでも、したからなんじゃないの?
花梨は可愛いんだから、ありえる話だと思わない?所で、その子可愛かった?」
皆んなの視線が僕に集まった。
僕は困ってしまった。
でも、考えてみると突然の事過ぎてほとんど顔も覚えていなかった。
可愛いかどうかなんて分からない…。
その時は頭が真っ白になっていたからだ。
ただ、覚えているのは唇が柔らかかった事と
肌の色だけだ。
透明感のある透き通った白い肌だった。
「肌は透明感のある白だった。
あと…唇はマシュマロ…みたいな…。」
「えっ?マシュマロ?
花梨ちゃん…どういう事なの?」
「初めての事で、僕も分からないけど…柔らかい感じ?」
ママは、絶望的といった顔で頭を抱えて、落ち込んでいるようだった。
それに対して、ミカさんは楽しそうな顔で、萌えていた。
「キャ〜!
イイわね!韓国人なんでしょ?
お肌触りたいわ。
きっとスベスベよね!
私、韓国人好きなのよね!
ドラマに出て来る子はみんな可愛くて、
食べちゃいたいぐらいだわ!」
「ミカ!あんたの好みはどうでもいいのよ!
花梨ちゃん…あなたはどうなの?
そいつの事気になるの?
可愛かったの?」
「そんなの分かんないよ…。顔だってハッキリ覚えてないし、一瞬の出来事だったし…
気になるとかないから!
もう…いいでしょ?
この話はもうやめようよ。」
とにかく僕は、初めての事で戸惑っていた。
僕は、急に恥ずかしくなってその場から逃げ出してしまった。
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