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「花梨!待って!
居た!シウ君が居たよ!」
僕はライト君の方を振り返って、駆け寄った。
ライト君が指さす方を見た。
すると、色白で、透き通った肌の背の高い男性がこちらに向かって歩いて来ていた。
ライト君はその人に手を振った。
すると、その人もこちらに気づいて、笑って手を振り返していた。
「シウ君!君の事探してたんだよ。」
「えっ?ボクですか?
どうしましたか?」
「この子が、君に話があるって…。」
ライト君に言われて、その人は僕の方を見た。
とても不思議そうな顔で、僕の顔をジっと見つめている。何故か、僕も目が離せなかった。
(何…この人…。昨日はちゃんと見てなかったけど…綺麗な顔してるな…。)
そして、その人は突然大きな声を上げた。
僕は、その声にびっくりしてしまった。
「オジェヌンチェソンハㇺニダ」
「えっ?何?何て言ってるの?」
「チェソンハㇺニダ」
その人は、僕の顔を見て韓国語を喋りながら、何度も頭を下げて何かを訴えて来た。
顔は申し訳なさそうな感じだった。
「もしかして…謝ってる?」
僕は、その人の言葉が分からなくて、ライト君に助けを求めた。
ライト君は、何故かニコニコしていた。
「ライト君は言葉が分かるの?
この人…何て言ってるの?」
「『昨日は申し訳ありませんでした。』って言ってるよ。」
「カプチャギキスアゴミアネヨ」
「えっ?また何か言ってる…。何?」
「『いきなりキスしてごめんなさい』と言ってるよ。多分、凄く反省してると思う…。」
僕は、別に謝って欲しくてここに来たわけではなかった。
どうしてあんな事をしたのかが知りたかったんだ。この人が何を考えているのか、どんな気持ちでキスなんかしたのか、それが知りたかったんだ。
「ライト君!僕は謝って欲しいんじゃないの。
どうして、あんな事したのかを聞きたい!
通訳してくれる?」
「多分だけど、ちょっとなら日本語が分かると思うけど…。
シウ君?どう?今この子が言った事分かる?」
その人は、不思議そうに首を傾げている。
「ボクですか?なぜボクといいましたか?
あなたは、女の人ではないですか?」
「はっ?何が?
僕の事言ってるの?
僕はどうしてあんな事したか聞いてるんだけど?女とか今は、どうでもいいから。
何で、僕にキスなんかしたんだよ!」
「ウェ?チャルモルゲッスムニダ…。
キスのことはごめんなさい…。
ボクは、あなたのことがカワイイとおもいました。
タンシネゲ チョンヌネ パネッソヨ.」
「はっ?僕が可愛い?
えっと…最後は何て言ったの?
ねぇ…ライト君?この人何て言ってるの?」
僕は、困ってライト君を見た。
ライト君は、何故か笑顔だった。
僕は、一人で戸惑っていた。
「『君に一目惚れした。』って言ってたよ。
多分だけど、シウ君は、花梨の事が好きなんだよ!
一目惚れかぁ‥イイなぁ!
俺もそんな事、言ってもらいたいよ。」
それを聞いて僕は、かなり動揺して、驚いた。
「えっ?はっ?な、な、何で⁈
訳わかんないんだけど…突然…何言ってるの?
可愛いとか、一目惚れとか…
意味が分からないよ…。」
僕は、とにかく訳が分からなくなって、
混乱して、その場に居るのが、耐えられなくなって、逃げ出してしまった。
僕は、二人を置いて、猛ダッシュで走り去った。顔から火が出そうだった。
(僕に…一目惚れ…⁈本当に何言ってんの?
それって…僕の事が好きって事なの?
たった一瞬見ただけで?僕の事…何も知らないくせに…?どうして…?)
僕は、大学の門から離れて、しばらく走っていたけど、途中で疲れてしまって、歩き出した。
(ハァ…ハァ…疲れた…。
どうしよう…思わず逃げちゃった…。
僕…何してんだろう…。
あの人…どうかしてる…。
突然キスしたり…
一目惚れとか言ったり…。
僕って可愛いの?
それは…ちょっと嬉しいかも…。
いや、いや…ないない…。
だって…僕には恋なんて無縁なんだから…。)
僕は、ママのために生きると決めていた。
僕を助けてくれた、ママの事が大好きだった
からだ。
恋なんて、どうでもいい事だ。
僕は、自分に言い聞かせていた。
(ただの気の迷いだよね…。
あんな人の事は忘れよう…。)
そう思った時、突然僕の携帯が鳴り出した。
スマホの画面を見て、ライト君からだと分かった。
でも僕は、電話に出るのを躊躇っていた。
逃げて来た、罪悪感もあったからだ。
すると遠くの方から誰かが走って来るのが見えた。その人はどんどんこちらに近づいて来た。
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