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「ママ!ただいま。
アレ?ママ?何で真っ暗なの?」
買い物から帰ると、お店の中は真っ暗で何も
見えなくなっていた。
僕は灯りをつけようと、電気のスイッチを探した。
すると突然パァーン!!と大きな音が鳴り出した。
僕は思わず驚いて、尻もちをついてしまった。
「花梨ちゃん!お誕生日おめでとう!!」
お店のスタッフと常連のお客さん達、それから
ママがクラッカーを持って僕を見つめている。
今日は僕の誕生日だったのだ。
僕はびっくりしたけど、とっても嬉しかった。
誕生日なんて最悪な思い出しかないと
思っていた。だけど、今は違う。
それは全て、ママが僕を変えてくれたから。
ママがいてくれたから、今の僕がいる。すごく幸せになれた。
僕は、心からママを愛している。
ママが僕を抱きしめてくれた。
あの日と同じように強い香水の香りがする。
僕はこの匂いが大好きだ。
初めて、僕の事を分かってくれた人。
僕に新しい人生を与えてくれた人。
それが、ママなんだ。
「ママ!ありがとう!
大好き!」
「あらまぁ!嬉しいわ!ママも花梨ちゃんが大好きよ!
さぁ、花梨ちゃんロウソクふーして!」
ママが作ってくれたケーキには沢山のロウソクがさしてあった。キラキラと輝くそのケーキは
まるで宝石のようだった。
僕はそのケーキに灯る火を消した。
その瞬間、みんなが一斉に拍手をした。
「花梨ちゃん!お誕生日、おめでとう!」
僕は幸せな気持ちになった。
赤の他人だった人達が、僕のためにお祝いしてくれて、気持ちを分かってくれた。
本当の家族じゃないけれど、僕は今が一番
幸せだ。
新しい名前をくれた。
大切な家族が側にいてくれる。
ここに居ていいんだって、僕を受け入れてくれた仲間がいる。
僕は最高の笑顔でみんなに伝えた。
「僕を…受け入れてくれて、ありがとう!」
その言葉を言った途端に、ママは泣き出した。
ママは涙脆い。
初めて会った時も泣いていた。
僕のために泣いてくれる。
僕が泣く前に、ママは泣く。
メイクが崩れるくらいに泣くから、僕はそれを見ると笑ってしまう。
きっと、僕を笑わせてくれるために、泣いてくれていたのかもしれない。
心が温かい。
ママはとても素敵な人なんだ。
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