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「今日で、二十歳ね。
早かったわね…。
花梨ちゃんは、本当にここで働くの?
他にやりたい事…。」
「ママ!前も言ったけど、僕はずっとママの
側にいたいの!分かってるでしょ?
やりたい事はずっとして来たよ!
ママのおかげで調理師の免許も取れたし、
これからは僕がママの役に立ちたいの!」
「ママは嬉しいのよ…。
でも…花梨ちゃんにはいろいろ経験してほしいのよ。ほら…恋だって…してほしいの!
もっと自由になれる場所があるんじゃないかと
思ってるのよ…。あなたには幸せになってほしいの。」
僕は十分幸せだった。
ママや、お店のスタッフのミカさん。
ランさん、マチコさん、そして常連客の人達に
囲まれて、僕は成長した。
そんなみんなの事を助けたい。
それが僕の夢だ。
僕はその為に、一生懸命勉強をしてきたんだ。
恋なんてしたいと思った事はない。
そもそも恋なんてしても、無駄だと思っていた。
どうせ捨てられるのがオチだ。
自分が捨てられた人間だから分かる。
僕はきっと、恋をしてはいけないんだ。
ママには言えない。
悲しませたくないから。
恋なんかしなくても、僕は幸せなんだ。
ママさえ居てくれればそれで十分だった。
「ママ!心配しなくても、大丈夫だよ。
僕は十分幸せなんだから!
ママが僕を愛してくれたから、僕は
今ここで生きていられるんだよ!
親孝行させてよ!」
「花梨ちゃん…。ありがとうね…。
ママも凄く幸せよ。
分かったわ…。花梨ちゃんの好きにしてちょうだい。
でも…恋バナはしたいわ…。」
「ママ…。」
ママは少しだけ寂しそうな顔をしていた。
恋は僕には縁のない話だ。
ママを喜ばせたいけど…
僕は臆病だった。
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