第一話 真夜中の出会い

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第一話 真夜中の出会い

人は何故恋をするのだろう? 僕はいつも疑問だった。 人の心は変わる。 恋なんてしたくないと思っていた。 あの人に出会うまでは…。 「花梨ちゃん。ちょっと買い出しに行って来てくれないかしら?」 「うん。いいよ! 何を買って来ればいいの?」 「メモを入れておいたから、これでお願い!」 ピンクの花柄のエプロンをつけたママが、僕に手招きをした。ママは茶色い無地の小さめな紙袋を僕に手渡した。 紙袋の中にはメモと財布が入っていた。 僕はそれを確認した。 ママは忙しい人だ。 お客様のためにいつも一生懸命に働いていた。 僕はそんなママの事を尊敬している。 いつか、ママの役に立つ人間になりたい。 それが僕の夢でもあった。 僕は店の裏口から外へ出た。 強い風が吹いている。 「うわぁ〜寒いなぁ…。」 思わず声が漏れるくらい、冬の寒さが身に沁みた。雪までちらついている。 僕は寒さで震えながら、ゆっくりと歩きだした。 すると、店の中からママが勢いよく飛び出して来た。 「もう…花梨ちゃん!寒いのに上着を忘れる子がいますか? 風邪でもひいたらどうするのよ…。 ほら、ちゃんと着なきゃダメよ! 雪まで降ってるじゃない! ほら、傘もちゃんとさすのよ!」 ママは僕のためにわざわざ上着とマフラーを 持って走って来てくれたのだ。 ママはとっても優しくて、心の温かい人だ。 孤児だった僕を拾って育ててくれた大切な家族。 それがママだ。 「ママ!ありがとう! すごく温かいよ! じゃあ、行って来ます!」 「うふふ。 いってらっしゃい! 気をつけて行くのよ!」 ママに手を振って僕は歩き出した。
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