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小一時間ほど歩き、太陽が黄色からオレンジに変わり始めた頃、ようやく私は素晴らしく美しい巻貝を発見した。
全体が滑らかな光沢を放つ銀色で、青い小さな突起が螺旋状に突き出ている。
少し派手だが、これならマリリンも納得してくれるだろう。
私がその巻貝を拾いあげると、中から一匹のヤドカリが顔を出した。
『おい。何をするんだ!? ボクは美味しくないぞ』
ヤドカリはちょっとムッとしたような、それでいてどこか怯えたような声でそう言うと、大きい方のハサミを威嚇するように振り回した。
「心配することは無いよ。おまえを食べるつもりは無いんだ。ただこの貝殻が欲しいだけさ」
『ボクを食べないというのは君、なかなか良い判断だよ。でもこの貝殻はボクの家だから君にあげるワケにはいかないね』
ヤドカリの口調がちょっと生意気だったので引きずり出してやろうかと思ったが、私はあくまで紳士的に彼に頼んでみることにした。
「たまには住み替えも悪くないぜ。また別の家を探せよ」
『ダメだね。こいつはお気に入りなんだ。他を当たってくれ』
「頼むよ。この綺麗な貝をマリリンに持って行ってあげたいんだ」
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