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波打ち際の湿った感触を足の裏で楽しみながら歩いていると、少し先に黄金色の光を見つけた。
ちょっとドキドキしながら近づいてみる。
光の正体は見事な金色の二枚貝の片割れだった。
少し眩しいが、これならマリリンも満足してくれるだろう。
手を伸ばして拾おうとした私より僅かに早く、一匹のカニがその貝殻を掴んだ。
私が貝を拾ってカニを振り落とそうとすると、カニがビックリしたように怒り出した。
『おい。何をするんだ!? これはボクが最初に手を付けたんだぞ』
「いいじゃないか。譲ってくれよ」
『ダメだね。この貝はボクとカノジョの結婚の儀式に使うとても大切な貝なんだ。君達ニンゲンにはわからないだろうけどね』
カニの口調がちょっと生意気だったのでひねり潰してやろうかと思ったが、私はあくまで紳士的に彼に頼んでみることにした。
「頼むよ。この綺麗な貝をマリリンに持って行ってあげたいんだ」
『何を言われてもダメなものはダメさ。この貝が無ければカノジョに嫌われちまう。そのせいでカノジョと結婚できなくなったらどうしてくれるんだ?』
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