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緩い潮風が乾いたTシャツの布地を抜けていく。
少し休もうかと思った時、前方に黒いサルが立っているのが見えた。
用心しながら近づいて行くと、サルは胸の前に四角いお盆のような板を抱えていた。
板の上には綺麗な七色の巻貝が4つほど並んでいる。
『やあ旦那。お土産に貝殻を一つ買っていかないか?』
サルの売り子はそう言うと白い歯を見せた。
「とても綺麗な貝だね。どこで拾ったんだい?」
『これは”虹色月光法螺貝”と言ってね、満月の夜の虹の下でしか取れないんだ。だからそう簡単には拾えないよ』
「虹色月光法螺貝? 聞いた事無いな。どうせデタラメだろう?」
『デタラメなんかじゃないって。ただ君達とボク等で呼び方が違うだけさ』
「ふうん、そう言うものか。で、いくらなんだい?」
『一つたったの100ペソ。安いだろ?』
「安いね。でも買わないよ。マリリンは拾って来て欲しいと言ったんだ」
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