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『ああ。それならやっぱり旦那は100ペソ払わなけりゃいけないよ』
「へぇ、どうして?」
『そしたらボクが海の神様に祈ってあげるから。旦那の未来に幸運が訪れますようにってね』
サルの売り子はサルらしからぬ爽やかな笑みを浮かべて片目を瞑ってみせた。
その醜悪なほど鮮やかなウィンクが妙に気に入ってしまったので、私は彼に100ペソを渡してやりたくなった。
短パンのポケットを探ると、なんとかかろうじて残っていた皺くちゃの100ペソ札が出てきた。
『うん。良い100ペソだね。これならきっと海の神様にボクの祈りが通じるよ』
私から100ペソを受け取ると、サルの売り子は神妙な顔つきで何やら怪しげな呪文を唱えた。
『さあ、お祈りは済んだ。旦那は運が良いよ。何しろボクは年に一度しか商売をしないんだから』
サルの売り子はそう言うと、あっと言う間に椰子の間へと消えて行った。
私は彼に騙されたのかも知れないが、まぁそれでも良いと思った。
満月の夜に出る虹が在るのなら、是非ともそれを見てみたい。
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