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茅葺の食堂で遅いランチを摂った後、裸足のまま海岸に出た。
渚は穏やかで、小さな波が寄せては引いている。
彼方に見える水平線では、空よりも海のほうが蒼い。
その濃いブルーから始まる水のグラディエーションは、足元に近づくに従がって徐々に淡い緑色になり、一番手前はもうほとんど色のない水であった。
少しづつ落ちていく熱帯の太陽に左頬を炙られながら、私はどうにか綺麗な貝殻を見つけようと歩き始めた。
水中眼鏡をつけて海に入ったり、椰子の木陰で本を読んだりしているうちに、日本を発つ時マリリンに電話したことをすっかり忘れてしまっていたのだ。
『何かおみやげを買ってきてあげよう』
私が珍しくそんなことを言うと、
『それじゃあ、一番綺麗な貝殻を拾って来てよ』
マリリンは(恐らく微笑を浮かべながら)そう答えた。
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