銀貨の僕は彼女のポケットで夢をみる

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 リサは、いつもお腹を空かせているのか、彼女のポケットにいるとお腹の鳴る音が聞こえてくることもある。それなら僕を使ってパンをいくつか買えばいいのに、なかなか彼女はそんなことをしない。  もしかしたらポケットに入れたままにして、僕のことなど忘れてしまっているんじゃないだろうか。  声を出せるものならば「僕を使ってパンを買いなよ」と言ってあげたい。  と思っていたが、どうも少し違うようだ。    このポケットには飴玉が入っていたり、髪留めがたまに入ってきたりもする。必要になれば彼女はポケットに手を入れてそれらを取り出す。僕に触れることもあるが、「違う」と言わんばかりに離されてしまう。  どうやら彼女は僕を使うつもりがないらしい。銀貨としての僕は使われないと何の意味もないのだけど。少なくとも僕をポケットに入れていたってお腹は満たされないだろう。
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