銀貨の僕は彼女のポケットで夢をみる

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*  飛竜の来襲から一ヶ月の月日が流れた。  王都からの復興部隊が到着し、港町はわずかに活気を取り戻しつつあった。  この日も僕はリサの上着のポケットに入れられていた。リサはやっと舗装されなおされた道を走っていた。息を切らしながら走るリサがどこへ向かっているのか僕は知っていた。  復興支援部隊の司令部に到着したリサは人混みをかき分けて歩いていった。やがて探すべき人物を見つけたらしく、 「サキさん! ノエルさん!」  リサはその名前を呼んだ。  サキとノエルが復興状況の確認のため、この町を再訪するとリサは果物屋の主人から聞いていた。リサは二人に御礼を言うためにこの場所へ来たのだった。 「ああ、リサじゃない。どう? お母さんと妹さんは?」  金髪のノエルがリサに話しかける。 「はい! もう元気になっていて、家も新しいのを建ててもらっているところです」 「それは何よりです」 「お二人のおかげです! 本当にありがとうございました」 『御礼はこっちに言って』  ノエルとサキが同時に言った。おかしくてリサは笑った。
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