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「お二人には感謝しかありません。本当に……。あの……これは御礼です」
リサはポケットの中に手を突っ込んできたかと思うと、僕を取り出した。
そして、僕はリサの手を離れて、誰かの掌の上に乗った。
「これは――?」
ノエルの声だった。僕はノエルに手渡されたらしい。
「王宮の方にできる御礼なんて私は何も持っていないんですけど、その500レニー銀貨はすごいんですよ?」
「というと?」
「お守りの効果として絶大なんです。この銀貨のおかげで、どんなことが起きても私は生き延びることができました。お二人はこれからも危ない場所へ向かうんだと思います。その無事をお祈りしたくて、お渡しします」
僕はただの500レニー銀貨だ。伝説のアイテムのような効果は何もない。
でも、リサは、僕をお守りだと言ってくれる。
それはとても嬉しいことだ。
そんな僕をリサは手放そうとしている。それは悲しむことではないのだろう。それほどまでにリサは感謝しているっていうことなんだから。誇らしく思ってもいいのかもしれない。
「そんな素敵な効果があるなら受け取れないです」
サキがノエルの掌から僕を拾い上げる。そして、僕をリサに返そうとするが、リサは両手を腰の後ろに隠し、受け取りを拒否する意志を示した。
「これからも……私のような子をたくさん救ってくださいね!」
そう言って、リサは身を翻したかと思うと、勢いよく走り出していってしまった。
遠ざかっていくリサの後ろ姿を見ながら、
「いい子だなぁ」
「そうですね」
と二人は言った。
サキは、ノエルの手に僕を戻すと、周りの兵に「紙と書くものを」と声をかけた。
兵はすぐに紙を持ってきた。サキは椅子に腰かけて、兵が持ってきた紙を机に置き、何やらサキは書き始めた。
「よし」
と言って立ち上がると、またノエルの掌から僕を取り出した。そして、持っていた紙で僕を包み始めた。
「ノエル、お願いが」
「はいよ。って、私は配達屋じゃないんですけど?」
ノエルはサキが何をしようとしたかわかるらしい。
「魔法使いの配達屋なんて洒落てますね」
「便利屋扱いされてるようにしか感じないけどね」
「お願いします」
「まぁ、あの子のためだしね。わかったよ」
何を話しているのか紙に包まれた僕からはよくわからかった。そんな僕に気づくこともなく、ノエルは何か呪文を唱え始めた。
「これからもあの子を守ってあげてくださいね」
サキの声が聞こえたかと思うと、僕は急に空中に浮いたような感覚があったかと思うと、今度は落ちるような感覚があった。
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