銀貨の僕は彼女のポケットで夢をみる

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* 「お金なら……」  彼女はポケットの中から僕を取り出した。そして、掌に僕を乗せた。もう片方の手にも財布があった。 「これっぽっちか? ままごとじゃないんだぞ」  目の前にいる兵士たちが声を挙げて笑い始めた。 「こんな程度じゃ剣の一本も買えんな。出直してこい」  武装した一人の男がリサの手を払った。僕はひび割れた石畳に投げ出された。ほかの銅貨や銀貨も散らばる。みんな悲しそうな顔をしていた。  兵士たちは町長の屋敷のほうへと走り始めた。 「待って! 行かないで! お願い!」  リサがその場で跪きながら泣き叫ぶ。しかし、兵士たちは一人としてリサに振り向くことはなかった。  父からもらった「お守り」だと言われた僕には何もできなかった。こんなときに役に立てないなんて。  そんなときだった。 「どうしたの?」  誰かがリサに声をかけた。女性の声だった。女性二人がリサに声をかけてくれたようだった。
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