59人が本棚に入れています
本棚に追加
*
「お金なら……」
彼女はポケットの中から僕を取り出した。そして、掌に僕を乗せた。もう片方の手にも財布があった。
「これっぽっちか? ままごとじゃないんだぞ」
目の前にいる兵士たちが声を挙げて笑い始めた。
「こんな程度じゃ剣の一本も買えんな。出直してこい」
武装した一人の男がリサの手を払った。僕はひび割れた石畳に投げ出された。ほかの銅貨や銀貨も散らばる。みんな悲しそうな顔をしていた。
兵士たちは町長の屋敷のほうへと走り始めた。
「待って! 行かないで! お願い!」
リサがその場で跪きながら泣き叫ぶ。しかし、兵士たちは一人としてリサに振り向くことはなかった。
父からもらった「お守り」だと言われた僕には何もできなかった。こんなときに役に立てないなんて。
そんなときだった。
「どうしたの?」
誰かがリサに声をかけた。女性の声だった。女性二人がリサに声をかけてくれたようだった。
最初のコメントを投稿しよう!