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「母と妹がこの中に!」
リサが叫び、急いで事情を説明した。
ここに自分の家があったこと、瓦礫の中に母と妹がいること、兵士たちに助けを求めたが何もしてもらえなかったことを。
女性二人は何度も頷いた。
「なんてこと! あのバカども。絶対許さない!」
金色のゆるやかな髪をした女性が兵士たちが去った方向へ言い放った。
「そんなこと言ってる場合じゃありません。この子のお母さんと妹とすぐに助けなければ!」
「もちろん!」
漆黒の長い髪をした女性の言葉に金髪の女性が頷く。黒髪の女性がリサの小さな肩をに手を置いた。
「大丈夫ですよ、任せておいてください」
その言葉はとても暖かく、優しさが伝わってきた。
しかし、か細い女性二人が増えたところでこんな巨大な瓦礫をどうやってどかせるって言うんだ。大人の男たちが必要だろう。
「私が……と思ったのですが、こういうのは向いてないですね」
黒髪の女性がため息をつく。今度は金髪の女性が彼女の肩を叩いた。
「あんたの魔法じゃ全部燃えちゃうからね。こういうのは私だね」
「任せます」
そう言うと黒髪の女性は、リサのほうを見た。
「大丈夫です。ここはノエルを信じてください」
ノエル、それは金髪の女性の名前のようだった。
ノエルは、何かを念じると、何もない空間に向かって、指でスーッと何か四角を描いた。何をしようというのだろう。
「これぐらいかな」
と呟いた後に何かの呪文を唱えた。
すると、一瞬にして瓦礫の多くが消えてしまった。
「ノエルは、空間転移の魔法が得意なのです」
呆然とするリサの隣で、黒髪の女性が言った。
こんな高度な魔法、もしかして、彼女たちは王宮の魔法使いたちなのか。
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