【2】

3/4
前へ
/7ページ
次へ
「今までに見たことはあって『雪』だっていうのは知ってても、実際に触れたことはなかったのね。外に出ていざどういうものかわかったら、びっくりしたみたいに戸惑ってたわ」 「そっか。『白いひらひら降ってくるもの』が冷たいなんて、知らなかったら想像もつかないよな」  咄嗟に「冷たい」という言葉は出なくても、驚きを表情や仕草で表したことだろう。  ただでさえ大きな目を見開いて、祖父母の顔を仰ぎ見る真理愛の姿が目に浮かぶようだ。 「お父さんと二人でなるべく汚れてない雪だけ集めたのよ。塀や枝やらの上に積もったのとかね。それから作ったんだけど、湿った雪だからすぐ()けて手袋にも沁み込んじゃって。手が冷たいでしょうに嬉しそうでねぇ。無理にでもやめさせた方がいいのかってハラハラしたわ」  孫娘との雪遊びを語る、母の弾んだ声。 「確かにちゃんと真ん丸じゃなくて歪だし、玉に固めるのも弱いけど。『綺麗に作る』のが目的じゃないから、大人が手を入れ過ぎたら意味ないでしょ」 「真理愛はまだ手も小さいし、力の入れ具合もわかんないだろうしな。そういうのもこれからだんだん慣れて行くのか」  手袋をはめた小さな手でぎこちなく雪玉を作る娘を想像し、微笑ましい気分になった。  ……ほんの束の間。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加