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 その顔にすぐ笑みが浮かぶ。 「……冷凍室に入れたね、最初のは。次からは玄関先に並べたっけ、小っちゃいのたくさん」 「よく覚えてるんだな」  素で感心した父親に、娘は溜息を吐かんばかりの表情になった。 「当たり前でしょ。そういうのって忘れないの! ──でもさ、大きいの作ろうとするとどうしても泥汚れが混じっちゃうんだよねー。雪国みたいにすごい降ったらキレイな雪使い放題だけど、それはそれで他が大変そうだし」  真理愛と他愛無い会話を交わしながら、圭亮は過去に思いを馳せていた。  今にも崩れそうだった、雪だるまとは名ばかりの雪の塊。  初めての娘から父への『贈り物』。あれからもう十年も経ったのか。  懐かしそうに話す真理愛にとっても、同じくいい想い出であるらしい。  「忘れられない」にも種類があるが、娘には間違いなく良い意味で印象が強いのだろう。  この程度の些細なことでさえも幸せを感じられるのは、圭亮がそれだけ年を取ったからなのだろうか。  だとしても、きっと悪いことではない筈だ。  ──あの頃の、恥ずかしいほど未熟だった自分も、少しは成長できたという(あかし)ならば。  雪の思い出は、圭亮にとっては戒めでもあるのかもしれない。                               ~END~
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