45人が本棚に入れています
本棚に追加
8. 決意
黒石は真守と一緒に、彼の母親の病室を訪ねた。
六人部屋の窓際のベッドに、真守の母親はいた。
「真守! あっ……」
息子の顔を見て笑顔になりかけた顔が、黒石を見て驚きに変わった。
「進さん」
「やっぱり……」
ベッドの上の女は、やはり昔別れた女だった。真守の話でもしやと思っていた。黒石と別れて結婚し、真守を産んだのだろう。
黒石が真守と出会った経緯や今後のことを話すと、真守の母親は後悔に顔を歪ませる。
「私があんな男に引っかからなければ……」とさめざめと泣いた。
黒石は彼女を説得すると、児童相談所に真守を連れて行き事情を説明した。すぐに警察へ通報され、山野は取り調べを受けることになった。
捜査の過程で特殊詐欺に関わっていたことがバレた山野は、実刑を喰らった。しばらく娑婆には出てこないだろう。もう真守が山野を恐れる必要はない。
「これから僕どうしたらいい?」
真守は途方に暮れていた。
独りぼっちになってしまった。
「お母さんが退院するまで、俺んとこに来るか?」
「えっ? いいの?」
真守は目を輝かせる。
「ああ。実はお母さんには許可をもらってある」
黒石は頷いた。
もう何からも逃げないと決めていた。
最初のコメントを投稿しよう!