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なんで開成は俺の自宅の住所を知ってるんだろう、と思ったら、前のソロ旅でチェックインのときに俺が住所を記入しているのを見ていたらしい……すごい記憶力だな。
車で向かった先は、開成の自宅があるマンション。
「なにか飲む?」
「ううん……あ、やっぱもらおうかな」
「ビールでもいい?」
「うん。ありがとう」
ソファに座って室内を見回す。前回はしっかり見る余裕がなかったけど、モノトーンでまとめた、すっきりした印象の部屋。本棚にはホテルや経営に関する本がたくさん。
開成が缶ビールのプルタブを上げ、俺に差し出してくれて受け取る。一口飲むと、苦みと喉越しが心地好い。
「忍、大丈夫?」
「え?」
「疲れたでしょ」
「……うん」
確かに疲れたけど、ほっとしている。スタッフのこと、開成のこと、解決した問題に安堵しているほうが大きい。
「お風呂入る?」
「……」
「もちろん一緒に」
「……だよね」
お湯を溜めている間、二人でのんびりビールを飲む。
「ごめんね、忍」
「もう『ごめん』はいらない」
「じゃあ、好き」
「うん。俺も好き」
ローテーブルに缶を置いた開成が俺に手を伸ばすので、俺も缶を置く。抱きしめられて優しく唇が重なる。
「……あ」
そうだ。
「なに?」
俺が開成の唇を手で覆うと、開成は少し不満そうな目をする。
「開成と俺って、いつから付き合ってたの?」
「え? 再会したところから」
「……そうなの?」
「うん。俺はそう思ってた。忍もまた会えたの嬉しいって顔してたし」
答えに詰まっても、本心は顔に出てたのか。でもそれって早とちりとも言わない?
「あと、週二回会うって約束したから。それって付き合うのOKしてもらえたんだと思ってたけど……」
あれって仕事の話じゃなかったんだ……。いや、仕事でもあるよな。職権乱用? というかやっぱり早とちり……だと俺は思うんだけど、どうだろう。開成の意外な一面に笑ってしまう。
「……違ったみたいだね」
「……ごめん」
「俺も『ごめん』じゃないのが聞きたい」
まっすぐな視線に捕まった。指で唇を軽く押されて、顔がどんどん熱くなってくる。
「……開成が、好き」
「うん」
また唇が重なり、触れては離れてまた重なる。渇いていた心が潤っていく感覚。
「……ぅ、んぁ……はぁ……」
唇の隙間から舌が滑り込んできて、俺の舌や上顎をなぞる。気持ちよくて思考がとろんとしてきた。
「お風呂入ろうか」
「……うん」
もう身体がじわじわしてる。
お風呂で髪も身体も丁寧に洗われて、ゆったりお湯に浸かった。温泉に一緒に入ったのを思い出す。開成に背中から抱きしめられて、すごく安心する。そっと体重を預けたら肩にキスをされた。
「許して欲しいなんて言える立場じゃないし、許してもらえるなんて思ってなかった。それでもやっぱり忍に許して欲しくて……どう謝ったらいいのか悩んでるうちにどんどん時間が経っちゃってて……」
「うん……俺も開成を怒らせちゃったって悩んでた」
「こんな俺のこと、考えてくれてありがとう」
「ん……」
開成のほうを向くと、また唇が重なる。
「……俺、開成のお父さんの気持ちがなんとなくわかって……」
「どういうこと?」
「会社がまさかいきなりこんなことになるなんて思わなくて……人生って、本当に予測もしないことが突然起こるんだってわかった」
「……そうだね」
「それで、開成を怒らせたままで二度と会えなくなったらって考えたら、絶対後悔じゃ済まないって思った」
開成の手を取って握ると、握り返してくれた。
「怒ってなかったけどね」
「うん……」
「ありがとう」
「……うん」
甘いキスにぼうっとしてくる。久しぶりの熱さに身体が疼き始めてぞくぞくしていたら、腰に開成の昂ったものが当たった。
「もう限界。出よう」
「俺も……」
早く開成が欲しい。
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