さようなら"あなた"

　席に座り、目的の駅まで電車に揺られる。
　次の駅に着くと、どっと人が乗り込んできて車内は満員になった。
　車内の皆が手元のスマホに目を落としている中、アタシはキョロキョロと視線を動かして辺りを見回す。

　すると、それはいた。

　アタシが消した"あなた"とそっくりの女。俯いて、おどおどして、自己主張なんてまるで出来ないような女。
　あー、本当にイライラする。バッグからスマホを取り出し、カメラモードを起動。
　そしてアタシはすくりと立ち上がると人を掻き分けてツカツカとその女の元へと向かう。ああ、本当にムカついてムカついてならないのよ！

　ねぇ、アタシが消してやった"あなた"。
　"あなた"ってば本当にどんくさくて役立たずだったけど、アタシは違うって所を見せつけてあげるわ。
　……ああ、ごめんごめん！　"あなた"ってばもういないんだったわね！