「かわいい」よりも

でも。

「羽海、食事…」
「後にしよう」
「…でも、ん…っ」
「もう黙って」

言葉を呑み込まれて、俺が黙るより先に黙らされた。
口内を愛撫する舌の動きに翻弄される。
少し唇が離れる。

「好き、誉」
「ん…っ」

また唇が重なる。
シャツの中に羽海の熱い手が入ってきて、肌を直接撫でる。
指が胸の突起に触れれば、おかしな声が出てしまう。
それを楽しむように突起をつままれてくにくにと捏ねられる。

「ま…て、俺が羽海に…？」
「そう。俺が誉を抱く」

シャツをたくし上げ、尖りを口に含む。
羽海の舌の熱さにも刺激にも欲が燃える。
軽く歯を立てられ、じんと快感が腰に伝わった。

「…だめ…それ…」
「噛むの、いいんだ？」
「んぁっ…」

また歯を立てられ、びくんと身体が震える。
反対の突起も指でつままれたら、また変な声が出た。

「もう勃ってる」
「……っ」

羽海が昂りに触れるので、顔を背ける。
恥ずかし過ぎる。

「見ていい？」
「……だめ、だ」
「そう」

すっと羽海が目を細めて、鎖骨の下を吸い上げる。
チリッと小さな痛みが走った。
羽海の髪を撫でる。
唇が重なり深く求められてぼんやりしていたら、するっとスウェットと下着を脱がされた。
抵抗しようとしても、キスでくらくらしていてうまく身体が動かない。
シャツも脱がされ、俺だけなにも身に着けていない格好になる。

「…羽海、も…」

羽海の着るシャツに手を伸ばす。
でも、さっと躱され、羽海は身体を起こして俺をじっと見る。

「誉、可愛い」
「…っだから…」
「可愛い…すごく可愛い」

羽海の言葉が身体を撫でるようで、ぞくぞくする。
触られているわけじゃないのに吐息が熱くなっていく。
じっと俺を見ながら羽海もシャツを脱いでベッドの下に落とす。

「可愛い、誉…俺の誉…可愛い」
「…『可愛い』、よりも…」
「ん？」
「……違う言葉が、いい」

恥ずかしい。

「好きだよ、誉」
「あ…」

どんどん熱が昂っていく。
触れられているわけでもないのに、ただ見られているだけなのに、もう達してしまいそうだった。

「うみ…も、むり…」
「そうだね。こんなになってる」

羽海が昂りに息を吹きかける。
もどかしさに身体を捩るけれど、もう一回息を吹きかけられて堪え切れない涙が零れた。

「…誉の泣き顔、すごくやらしい」
「なに、いって…」
「ねえ、どうして欲しい？　誉の誕生日だから、誉のして欲しいことする」
「っ……」

して欲しいことって…。
意地悪に笑む羽海がかっこよくて、愛おしくて、でも恥ずかしくて。
ぎゅっと目を閉じる。
欲望が滾って全身が熱い。
触れて欲しい。
全身に、余すところなく羽海の証が欲しい。
羽海が見ている。
視線が身体に絡みついているのがはっきりわかって、目を開ける。
でもすぐに羽海の手で目を覆われた。