異端弁護士輪

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 秋森穂乃果は優秀な弁護士だった。しかしそれは裁判によらない解決方法が多くて当人が言い負かすという部分になる。それでも依頼に関しては損をしていることはそう無い。  弁護士といえば裁判で格好良く発言しているところを想像するもんだが、当然そんな仕事ばかりではないのだ。単純な書類仕事もある。秋森はそんな厄介事に追われてた。  裁判をしないので他の弁護士よりは書類仕事は少ないけれど、それでも普段後回しにしているのでしっぺ返しをくらっている。その理由には秋森が書類仕事がキライだということにある。だから今は不服げな表情を浮かべてる。 「怒らないで」  隣からそんなことを話すのはパラリーガルの前島だ。彼はずっと秋森とコンビを組んでいて、彼女のことを良く知っている。今の言葉だってため息が聞こえたからの言葉。 「こんなのあたしの好きな仕事じゃないんだい!」 「これも弁護士としての仕事ですよ。文句言わないで」  ずっと前島は書類を片付けながら話をしているのだが、秋森のほうはペンを鼻に挟んでもう書類は手にすら持ってない。 「なんか依頼は無いのかい! 暇だから仕事探そうか!」 「それはこの書類の山が無くなってからにしましょうね」  普段秋森は舞い込んでくる依頼だけじゃなくて、自分で騒動を探して仕事にしているときもある。だからその提案をしていたのだが、前島から二人のデスクに「これでもか!」とある書類を示された。  文句の言いようが無くなって秋森はそれでも書類仕事をする気にはなれないで、デスクに顎をのせて退屈そうにしている。  横を向いてそれを瞬時に察知したようにやっと前島が横を秋森のことを確認するとだらけている秋森が居る。
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