*俺のポケットに国を作るな*

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 俺は面喰らった。 「先に(なんじ)が運んできた食糧は、臣民(しんみん)に等しく分け与えた。朕に仕えられることを、大いに誇りに思うがよい。今後も定期的に食糧を差し出したまえ」  俺は無言でとんかちを取り出した。皇帝が慌てて制す。 「やめたまえ。朕を殺めるつもりか」 「ふざけるな」  俺は言い返した。 「じいちゃんの形見のスーツだぞ。そのポケットに勝手に国なんか作った上に、俺のちんすこうまで喰いやがって」 「この地に国を建てたのには、訳があるのである」  俺はとんかちを置いた。皇帝が揚々と語り出す。 「我々は地球の生れではない。遥か母星を旅立ち、ワープを繰り返してこの惑星に辿り着いたのである。地球は、水と大気には恵まれておるが、恐るべき巨大生物の棲まう辺境の惑星であった。されど、朕の軍隊は銀河随一の力を誇る。八つ足の、節のある怪物との度重なる戦いを経て――」  俺はこっそりとあくびをした。この惑星で、他人(ひと)の自慢話ほどつまらないものはない。 「――そこで、怪物の襲撃から逃れるために、この大洞穴に国を建てることと定めたのである」  彼は自慢気に話し終えた。あぐらを組み、皇帝に言う。 「あんた、随分偉そうだな。そんなに強いなら、俺の手のひらから逃げ切ってみろよ。ただし、ワープとかいうズルはナシだからな」  皇帝は高笑いした。 「この金色(こんじき)の宇宙船を使えば、ひとっ飛びである」
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