1人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
俺は面喰らった。
「先に爾が運んできた食糧は、臣民に等しく分け与えた。朕に仕えられることを、大いに誇りに思うがよい。今後も定期的に食糧を差し出したまえ」
俺は無言でとんかちを取り出した。皇帝が慌てて制す。
「やめたまえ。朕を殺めるつもりか」
「ふざけるな」
俺は言い返した。
「じいちゃんの形見のスーツだぞ。そのポケットに勝手に国なんか作った上に、俺のちんすこうまで喰いやがって」
「この地に国を建てたのには、訳があるのである」
俺はとんかちを置いた。皇帝が揚々と語り出す。
「我々は地球の生れではない。遥か母星を旅立ち、ワープを繰り返してこの惑星に辿り着いたのである。地球は、水と大気には恵まれておるが、恐るべき巨大生物の棲まう辺境の惑星であった。されど、朕の軍隊は銀河随一の力を誇る。八つ足の、節のある怪物との度重なる戦いを経て――」
俺はこっそりとあくびをした。この惑星で、他人の自慢話ほどつまらないものはない。
「――そこで、怪物の襲撃から逃れるために、この大洞穴に国を建てることと定めたのである」
彼は自慢気に話し終えた。あぐらを組み、皇帝に言う。
「あんた、随分偉そうだな。そんなに強いなら、俺の手のひらから逃げ切ってみろよ。ただし、ワープとかいうズルはナシだからな」
皇帝は高笑いした。
「この金色の宇宙船を使えば、ひとっ飛びである」
最初のコメントを投稿しよう!