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両国の核兵器は、一瞬でこなごなになった。
「いい加減にしろ!!」
俺は二人を睨みつけた。
「戦争なんて失うものばかりで、何も得られやしない!! 俺の国も、ついこの間まで戦争をやっていた。罪のない大勢の地球人が死んだ。じいちゃんは毎日ひもじい思いをしながら、弟を背負って畑仕事をした。ばあちゃんは父親や兄貴と離れ離れになって、親戚の家へ疎開した。俺が今ここにいられるのは、祖父母がたまたま無事だったからだ」
とんかちを握る手に、力がこもる。
「どっちが先にやったとか、どっちが嘘つきだとか、俺はどっちでもいいし、どうでもいい。宇宙はこんなに広いのに、いつまで狭い世界でいがみ合っているんだ。つまらない意地のために傷付け合うのは、バカバカしいから即刻やめろっ!!」
肩で息をしながら、俺は立っていた。
気圧されたように、二人はしばらくのあいだ黙り込んでいた。先に口を開いたのは、大統領だった。
「このまま戦争から引き下がるのは、納得がゆきません。ですが、人の命を重んずるべきだというお考えは、ごもっともだと思います。今後は他国を二度と攻撃しないと、ここに誓いましょう」
皇帝は長い唸り声のあと、弱々しく言った。
「戦争には、良い戦争も悪い戦争もないのかもしれぬ。朕は刀槍矛戟でなく、爾の心に負けたのである。今宵、朕と臣民は遠い土地へ移り住むこととする。迷惑をかけて、本当にすまなかった」
二つの国の全ての国民が旅立ったことを確めて、俺は約束通り、スーツをクリーニングに出した。返ってきたスーツのポケットを覗いてみたけれど、やっぱり中はすっからかん。まるで何も入っていなかったかのように、きれいさっぱり洗い流されていた。
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