プロローグ①

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プロローグ①

遥か昔、ある国に[飛龍(フェイロン)]と[佩芳(ベイファン)]という二人の少年がいました。 二人はとても仲良しでした。 飛龍(フェイロン)の父は王の右腕と呼ばれる騎士団の団長。  佩芳(ベイファン)の父は腹心の部下と言われる文士でした。 役職は違えどその地位と名声は誇り高く、二人はいい意味ライバルでもありました。 彼らの二人の息子[飛龍(フェイロン)]と[佩芳(ベイファン)]は兄弟の様に仲が良く、毎日を共に過ごしていました。 父親が騎士として戦に従事し、留守がちだった飛龍(フェイロン)は寂しい日々を過ごさなければなりませんでした。 その為幼い頃から、飛龍(フェイロン)佩芳(ベイファン)と一緒にいる時間が多かったのです。 お互い屋敷も近く、母親のいない飛龍(フェイロン)佩芳(ベイファン)の母親の手料理や優しさに癒されていました。 父親には男らしくあれと厳しく言われていても、戦さで留守の間は誰憚(だれはばか)る事なく佩芳(ベイファン)の家で過ごしました。 両親に溺愛されて育った佩芳(ベイファン)は、そんな飛龍(フェイロン)に優しく、いつも一人でいる彼に寄り添い、側を離れません。 そんな佩芳(ベイファン)の優しさが飛龍(フェイロン)を癒し、誰よりも大切な存在となっていました。 二人はいつも一緒でした。 父に言われるまま武術に励む飛龍(フェイロン)は体格も腕力も誰よりも優れていました。 一方、佩芳(ベイファン)は文士である父に似て、読み書きや戦法などの机上論に長けています。 そんな二人は共に王への忠誠を誓っていました。 心優しい佩芳(ベイファン)は時として、揶揄いや悪戯の対象になりましたが、そんな時は必ず飛龍(フェイロン)が彼の盾となって佩芳(ベイファン)を護ります。 いつしか佩芳(ベイファン)の中に、友達以上の気持ちが芽生えていきました。 もちろんそんな事を口にできる訳もなく、ひたすら秘めた気持ちを押し殺し、飛龍(フェイロン)の側にいる事だけを望んでいました。 方や飛龍(フェイロン)の方も、守るべき対象の友達ではなく、淡い恋心を持ち始めていました。 父に騎士となるべく勇猛果敢な青年へと育てられた飛龍(フェイロン)は、恋心を持った自分に罪悪感を持っていました。 それでも、父の留守に佩芳(ベイファン)の家で過ごす日々は楽しく、一緒に寝る夜は密かに胸をときめかせました。 佩芳(ベイファン)が眠りについたのを確かめて、その柔らかなくちびるに口づけをし、白い肌に手を触れ、ある時は気持ちが昂まり、思わずズボンの中まで手を入れた事もありました。 まだ少年のそれは柔らかく、揉みしだくと自分の手の中で徐々に硬くなっていくのが嬉しくて堪らなかったのです。 飛龍(フェイロン)は気がついていませんでしたが、そんな悪戯に佩芳(ベイファン)は気づかない振りをして受け入れていたのです。 だからこそ、好きな飛龍(フェイロン)の愛撫に身体が反応していた事に、まだ未熟な飛龍(フェイロン)は気がついていませんでした。 夜毎の愛撫は飛龍(フェイロン)の秘密の楽しみとなり、知らんぷりで感受する佩芳(ベイファン)もまた、心密かな楽しみでした。 どちらもが、言い出せないまま青年となり、いつしか泊まりに行く事もなくなりました。 お互いの想いを胸に秘めたまま、二人は青年になり共に王に一番近い存在となりました。 飛龍(フェイロン)は敵国との戦に勝利し、数々の戦績を手中に収めました。 そして佩芳(ベイファン)もまた、王の側近として片時も離れることはなく王に寄り添い、飛龍(フェイロン)の活躍も王と共に見守り続けました。 例え何ヶ月逢えなくても、胸の奥に秘めた想いは燻ぶり続け、小さな炎となって燃えていたのです。 勝旗を掲げてお国入りした飛龍(フェイロン)を、我が事のように歓喜し燃える眼差しで迎えました。 そんな佩芳(ベイファン)に同じ熱情を向け、見つめ合う二人の胸は切なく軋むのでした。 お互いの気持ちを知ることもなく、周りからは良きライバルと言われ、常に比較される事でしか関われない関係になっていました。 飛龍(フェイロン)が女性に告白されたと聞くと、次の日は別の女性が佩芳(ベイファン)に告白します。 女性などには目もくれない飛龍(フェイロン)だと知っていながら、佩芳(ベイファン)の気持ちは激しく騒めきました。 子供の頃とは言え、自分にあんな事までした飛龍(フェイロン)が女性と付き合うのかと思っただけで腹立たしく、自分もこれ見よがしに女性と付き合いました。 少しずつ二人の間の溝は深まり、疑心暗鬼と嫉妬の鎖に雁字搦めになっていったのです。 好きだと言う気持ちさえ腹立たしく、そんな気持ちを持ち続ける自分に嫌悪しました。 飛龍(フェイロン)佩芳(ベイファン)への気持ちを振り切る為に遠国の戦に志願し、佩芳(ベイファン)から遠く離れた場所で戦に明け暮れました。 それでも、恋心は消える事なく我が身を(さいな)み、目を閉じれば優しい眼差しと、自分に向けられた微笑みが目の前に浮かんでは消え、燻り続ける埋み火は日を増す事に大きくなり、いつ爆発するかも分からない火種となっていました。
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