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プロローグ②
そんな時、佩芳が王の寵愛を受けているとの噂が飛龍の耳に届いたのです。
遠い敵国での戦に疲れた飛龍にとって、それは耐え難い裏切りに思えました。
恋慕の炎は嫉妬の炎と変わり、居ても立っても居られないほど飛龍の気持ちを苛みます。
戦の終結と同時に国へ帰還した飛龍は戦果の報告に王宮を訪れました。
激しい雨の中、王宮を訪れた飛龍が見たのは王の傍らに寄り添う佩芳・・・・・二人が顔を見合わせ、目くばせしたと勘違いした飛龍はその瞬間全ての想いが爆発しました。
愛剣を抜き愛する佩芳の胸を刺し貫いてしまいました。
くずおれる佩芳は飛龍の剣に手を添え、その胸に刺さった剣を更に自ら深く刺し込んだのです。
噴き出す血の海の中、飛龍は佩芳を抱き上げました。
飛龍を見つめる目に涙が溢れ、目尻からとめどなく流れ落ちています。
佩芳が息絶える前に唇を震わせながら呟やいたのは・・・・・
「飛龍・・・・・愛してる。ずっと逢いたかった。ごめんなさい・・・・・」
溢れた涙が頬を伝い、血で染まった手で佩芳の手を握りしめる飛龍。
この時飛龍はどれほど佩芳が自分を恋しく思っていたのかを知りました。
そして、同じ想いだった佩芳を失った事への絶望感と後悔で目の前は真っ暗になったのです。
佩芳の胸の剣を抜き、自らの胸に躊躇う事なく突き刺しました。
溢れる赤い血の海の中二人は重なり合い、初めてで最後の抱擁と口づけをしました。
遠い未来があるのなら、いつか必ずもう一度巡り合い、愛し合う事を誓い若い命の火は静かに消えました。
飛龍と佩芳の魂は、千年の時を超えて今蘇ったのです。
飛龍は[桐ヶ谷 悠馬]となり、佩芳は[森満 尚]として再び巡り合い、運命の扉は開かれました。
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