ずるい男

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「あの夜のこと、覚えてますか?」 「っぁ、ごめ……覚えて、なくて……っ」 胸の突起を舌で転がしながら聞かれて、首を横に振る。じんわりした刺激に身体が疼いて変な感じ。 「羽田さん、すごく可愛かった……。初めてだって言って、真っ赤になりながら俺にしがみついて」 「あっ!」 歯を立てられたら甘い痺れが走った。尖りをねぶり、そのすぐそばの肌を吸われる。 「ん……、あのときも……キスマーク、たくさんついてた……」 「俺のものにしたかったんです。羽田さん、何回聞いても名前を教えてくれなかったから、悔しかったのもあって……」 「え……なんでだろ……」 「『俺なんかだめだから』としか答えてくれなかった。全然だめじゃない。羽田さんがいいのに」 肌のあちこちを吸い上げる今埜くんの髪を撫でる。見た目より柔らかい髪にどきどきしながら刺激を受け入れる。 「今埜くん……キスしたい」 キスをねだると、ふに、と唇が触れ合って、啄むキスが降ってきた。ちゅ、ちゅと繰り返されて、それから深くなっていく。キスに夢中になっていたら、太腿を撫でられて大げさに身体が跳ねてしまう。その手が肌の上を滑り、脚の間を行き来する。 「んん……はぁっ……あ……」 既に昂っているのがわかるから、触られるのが恥ずかしい。軽く扱かれたら眩暈がするほど気持ちよかった。初めてじゃないけれど、ちゃんとした状態なのは初めてなので、ひとつひとつの刺激から与えられる快感に驚いてしまう。 扱かれると、濡れた音がする。興奮している自分を聴覚から教えられて頬が熱くなる。今埜くんを見ると、欲情に濡れた瞳が色っぽくて一瞬呼吸が止まってしまう。それに気づいたのか、今埜くんが微笑んでくれた。 「羽田さん、やらしくて可愛い」 「かわいくなぃ……っ」 「ねえ、もっと見せてください。やらしいところ」 「あ……っ」 大きな手が奥まった部分へと滑る。今埜くんだけが知っているところをなぞられ、耳まで熱くなる。これ、どうにかなっちゃいそう。緊張と恥ずかしさと、期待と。色々なものがごちゃ混ぜになって心でぐるぐるしている。後孔をなぞっていた指先が、中にゆっくり滑り込んだ。 違和感すごい……。でも思ったより大丈夫かも。 キスが欲しくて今埜くんの瞳をじっと見つめたら、気持ちが伝わったのか、願いどおりのキスをくれた。キスで蕩かされながら、丁寧にほぐしてくれる指を感じる。指が増やされて、違和感よりもどきどきしてくる。今埜くんとひとつになるんだと思うと、胸がいっぱいになる。 忘れることにした、あの夜のこと。それなのに偶然再会して、好きになって、好きになってもらえて――。幸せすぎて泣きそう。 「羽田さん、いいですか?」 「うん……あ、待って」 昂りがあてがわれて頷いたけれど少し待ってもらい、今埜くんに手を伸ばす。 「……手、握ってて」 「はい。……可愛いな、ほんと」 指を絡めて手を握ってもらったら、ほっとした。おでこにキスが落ちてきて、もう一回頷くと、今埜くんがゆっくり腰を進めた。痛みはないけど苦しいかも。今埜くんの手をぎゅっと握る。 「辛かったら言ってください」 「うん……あ……っ」 拓かれていく感覚が不思議で、でもどこか覚えのあるような感じもする。あの夜のことを覚えていないのが残念で寂しい。今埜くんの肌を知りながら忘れてしまったなんて……。 「入りました。痛くないですか?」 「うん……大丈夫」 今埜くんとひとつなんだ……。実感するとともに身体の奥で沸き上がっていくものを感じる。血液が沸騰しそうなくらいに興奮する。はしたないとわかっているのに、腰を少し揺らしてしまう。 「羽田さん?」 「……今埜くん、動いて」 「でも、まだ……」 「早く……」 今埜くんの耳たぶを甘噛みすると、頬を上気させた今埜くんの瞳が妖しい色を帯び、噛みつくようにキスをされた。 「んぅ……ふ、ぅ……んんっ!」 今埜くんの動きに合わせて快感が押し寄せてくる。揺さぶられるたびに目の前がチカチカして、今埜くんの手をきつく握る。シーツに皺が寄る感覚さえ快感になって喘ぐ俺を、今埜くんが高みに連れて行く。 「あ、あぅ……ん……あっ」 俺を抱いている今埜くんがあまりに色っぽくて見ていられず、顔を背ける。でも顎を持たれて顔の向きを戻され、今埜くんのほうを向かされた。 「っ……どこ見てるんですか?」 「……だってっ……」 「俺を見て……羽田さん」 「ああっ……!」 奥に擦りつけるように動かれ、違う甘さに腰が震える。身体を仰け反らせると、今埜くんが胸の尖りを口に含む。反対側も指でつままれ、じんと鈍い快感が腰に響く。 「あ……あ……」 じわじわと広がっていく快感に身体を捩ると、また奥に擦りつける動きをされた。頭が真っ白になる。 ちゅ、と音を立てて尖りから唇が離れ、今埜くんが腰を動かす。高められた身体が限界を訴える。 「こんのくんっ……も、イきそう……っ」 「うん、俺もです……」 昇り詰めるために動きが速まる。指を絡ませて握り合った手にぎゅっと力をこめて俺が果てると、今埜くんも綺麗な顔を歪めて、身体を小さく震わせた。
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